2003 Fiscal Year Annual Research Report
複合電子分光顕微鏡による金属酸化物中のサブナノメートル欠陥の性質と構造
Project/Area Number |
14350340
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武藤 俊介 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (20209985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 朋子 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (90283415)
田辺 哲朗 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00029331)
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 / カソードルミネッセンス / 波長分散X線分析 / 第一原理電子論計算 / 水素吸蔵 / 黒鉛材料 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究は透過型電子顕微鏡の高エネルギー入射電子と固体試料との相互作用で生じる様々なプロセスから発せられるエネルギー損失、発光などを総合的に活用したナノ分析技術の確立を目指すものである。本年度は前年度でほぼ確立した電子エネルギー損失分光法の応用と波長分散X線検出器の開発を行った。 電子エネルギー損失広域微細構造の解析を利用して、炭化珪素、シリコンゲルマニウム合金における酸素不純物の関与する格子欠陥の構造解析に成功した。これらは現時点で同様の手法である放射光分析に勝るものである。また新たな測定法として、プラズモン損失の分散関係を角度分解測定によって捉えることを固体中の水素検出に応用した。これによって多量の水素を吸蔵するナノ構造化黒鉛中の水素存在サイトの同定に初めて成功した。さらに同じ材料に多量に不純物とした混入している鉄炭化物をその電子状態から分析し、水素の吸蔵によって3d電子軌道の占有率が変化することを捉えた。このことはこれまで困難であった鋼中の水素検出に新しい可能性を拓くものとして期待できる。この成果は更に発展して、第一原理電子状態計算と組み合わせて、これまで困難であった水素の固体中分布の可視化、マッピングへと向かう。 従来あまり利用されてこなかった回折モード測定を用いて電子チャネリングによる原子サイト選択的な測定にも着手した。このことにより、価数揺動を示す希土類酸化物においてヤヌス状態を名付けることのできる新しい固体中の原子状態を実験的に見いだすことに成功した。 また波長分散X線検出器の開発は、ハードウェアの点でほぼ完成をみることができた。今後試料から発する微弱なX線を検出するために、試料ホルダーの改良などが要求される。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Muto, T.Tanabe: "Reverse Monte Carlo analysis of extended energy-loss fine structure for disordered structures of tetrahedrally co-ordinated materials"Journal of Electron Microscopy. 52. 125-132 (2003)
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[Publications] S.Muto, T.Tanabe: "Local structures and damage processes of electron irradiated α-SiC studied with transmission electron microscopy and electron energy-loss spectroscopy"Journal of Applied Physics. 93. 3765-3775 (2003)
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[Publications] K.Hayakawa, T.Fujikawa, S.Muto: "Experimental and full multiple scattering approaches to energy-loss near-edge structures for c-Si, a-Si and a-Si:H"Chemical Physics Letters. 371. 498-503 (2003)
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[Publications] S.Muto, T.Tanabe, S.Igarashi: "TEM analysis of blisters on Si surface formed by hydrogen ion irradiation"Physica Scripta. (印刷中). (2004)
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[Publications] S.Muto, T.Tanabe, T.Maruyama: "Cross sectional TEM observation of gas-ion-irradiation induced surface blisters and their precursors in SiC"Materials Transaction. Vol.44 No.12. 2599-2604 (2003)
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[Publications] T.Yoshida, T.Tanabe, M.Hirano, S.Muto: "FT-IR study on the effect of OH content on the damaging process in silica irradiated by hydrogen"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. (印刷中). (2004)
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[Publications] 西谷滋人, 青木正人, 武藤俊介共編: "21世紀の格子欠陥研究に残された課題"吉岡書店. 198 (2003)