Research Abstract |
工業生産可能な微細粒マグネシウム合金の開発を目的として,研究を行い,下記を明らかにした. (1)マグネシウムの本来の特性として,室温では強度な加工を圧延により施すことは困難と考えられていた.しかし,高純度のマグネシウム薄板試料を,真空蒸着法により作製し,この試料について室温で冷間圧延を施したところ,約80%の圧下率での加工が可能であることが分かった.ただし,試料の元厚は1mm以下のものについてである.ここで用いた試料の化学分析を行ったところ,Znを10ppm,Feを1.8ppm含むが,Al,Mn,Si,Cu,Niなどはいずれも1ppm以下であった. (2)上記試料の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ,再結晶組織と未再結晶組織の混在した微細組織であり,再結晶領域の方が未再結晶領域よりも著しく多く見られた.すなわち,純度の高いマグネシウムに,室温で強加工を施すと動的再結晶を生じることが明らかとなった.マグネシウムは本来,動的再結晶を起こしやすい金属であることが示された. (3)本研究の目的はマグネシウム合金の結晶粒微細化である.上記のように,純マグネシウムにおいては,室温でも動的再結晶が生じるが,その結晶粒は粗大であり粒径はおよそ10〜200μmであった.すなわち,動的再結晶の後,粒成長を生じているのである.そこで,AZ31マグネシウム合金を試料として,動的再結晶粒の粒成長を,析出物を利用して抑制する試みを行った.合金であるため,室温では圧延できず,473〜673Kで20〜60%圧延した.その結果,圧延のみで,約3〜5μmの粒径の微細組織が得られた. (4)上記温間圧延の後,473〜673K,3.6ksの焼鈍を行った.その結果473K焼鈍では3〜5μmの粒径のままであったが,573K以上では20〜50μmと粗大化することが分かった. (5)TEM観察の結果,473K焼鈍では,粒界は析出物にピン止めされているのに対して,573K焼鈍材では,粒界に析出物が見られなかった.この析出物はMg_<17>Al_<12>であった. 動的再結晶しやすいというマグネシウムの特性と,その後の粒成長の抑制に析出物が有効に寄与することが明らかとなった.今後,AZ31よりも析出物が高密度に形成されることが期待されるAZ91合金について同様な研究を行う.
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