Research Abstract |
下地金属となるZnを溶解させないという観点から還元重合法を選択し,単量体としては,還元重合することが知られている2-ビニルピリジン単量体を用いて,可逆電位掃引方式および定電位方式で電解重合を行い,重合膜の形成量および形態に及ぼす浴pH,陰極電位,掃引速度,浴温,通電方法等の電解因子の影響について調査すると共に,重合膜を形成させたZn板の耐食性を評価した。可逆電位掃引方式による重合膜の形成量は,浴pHに大きく依存し,pH5前後で最も多くなった。これは,2-ビニルピリジンモノマーの重合反応では特定量のプロトンが重要な役割を果たしていることを示唆している。皮膜の形態は,水素発生による影響を受け,その発生量が多くなるような電解条件下では,ガス発生跡と思われるピットや凹部が多数形成され,不均一となった。重合条件としては,pH5,浴温20℃〜30℃において緻密な皮膜が得られた。一方,定電位電解の際の電流密度は,皮膜が2次元方向に優先成長し下地を被覆する初期に急激に低下し,その後緻密な皮膜が厚く形成されるほどより低下した。可逆電位掃引電解法と定電位電解法による重合膜を比較すると,膜厚,形態には,両電解法による相違は特に認められなかった。また,3%NaCl溶液中でのZn板のアノード電流密度およびカソード電流密度は,電解重合膜を付与することにより共に低下した。ただし,重合膜を施した場合でも,電位0Vで500A/m^2程度のアノード電流が流れた。これは,重合膜のクラックを通して,Znが溶解したためと考えられ,クラックフリーの皮膜を形成させれば,Zn板のアノード電流密度は更に低下すると予想される。
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