Research Abstract |
前年度において,硫酸塩,スルファミン酸塩および塩化物浴を用いて,Fe-Ni合金の電析挙動を調べた結果,Fe-Ni合金析出の異常型現象は,Niの高電流密度下での分極現象および低電流密度下でのFeの復極現象の結果起こっていることがわかった。 そこで本年度は,主として硫酸塩浴を用いて,Fe-Ni合金電析膜の表面性状の改善と磁気特性の基本的特徴および磁気特性に及ぼす電解因子について調べた。その結果,電析法で作製したFe-Ni合金膜の保磁力は,乾式膜と同様に合金組成への依存性を強く示すことがわかった。 また,前年度行った合金電析においては,高電流密度域において電析物の外観に劣悪なものが認められた。そこで,添加剤による表面性状の改善を検討した。電解浴にホウ酸を添加すると,表面性状は広い電流密度範囲にわたって光沢をもたらすことがわかった。磁気特性として,電析合金膜の保磁力を調査した結果,10Oe以上であり改善されなかった。しかし,電解浴にサッカリン,チオ尿素を添加することで保磁力低下(5Oe以下)が可能となり,乾式膜とほぼ同程度のものが得られることがわかった。 低保磁力を示した電析膜の結晶粒径は,いずれも無添加浴から得られた電析膜に比べ減少していた。ただし,サッカリン、チオ尿素の添加による保磁力低下は、Ni含有率の高い電析膜についてのみ生じることから,電析膜の保磁力を低下させるためには,適正な電解条件,添加剤により,膜の組成および結晶粒径を制御することが重要であることがわかった。ただし,これらの制御のみでは,保磁力の低減に限界が認められたので,膜構造,内部応力および表面粗さなどの他の要因についても今後さらなる検討が必要である。 また、実用材料上(SUS304)に電析法でのFe-Ni合金膜を作製し,実際に磁気センサとして作動するかを試験をした結果,Ni92.7%電析膜は出力値こそ若干劣るものの,直線性に優れており十分実用可能であることが確認された。
|