Research Abstract |
(1)昨年度高温エリプソメータを用いて測定したNi-Cu2元系固体合金の波長632.8nm,温度800-1600Kにおける放射率に関して推算式を構築した。この放射率は,正の温度係数をもち,組成に対しては上に凸の放物線的な変化を示すが,自由電子モデルを用いて放射率を計算したところ,その絶対値は測定値よりも小さいが,温度及び組成依存をよく記述し,これらの依存性は自由電子の放射に由来することを明らかにした。また,測定値と計算値との差はd電子の寄与に対応するが,この寄与は20at%Ni以上では温度・組成に依らずに一定値を示した。以上のことより,632.8nmにおける放射率の推算式を温度及び組成の関数として定式化した。 (2)高温エリプソメータを用いて,Ni-Co2元系固体合金の632.8nm,温度300-1600Kにおける放射率を測定した。組成によらず,放射率の温度係数はキュリー点以下では負,以上では正であった。組成依存に関しては,低温域では上に凸,高温域では下に凸の放物線的な挙動を示す傾向が認められた。 (3)コールドクルーシブル放射率測定装置を用いて,Ni-Cu2元系液体合金の放射率を500-2500nmの波長及び1350-2000Kの温度範囲において測定した。液体においても,放射率の温度係数は正であること,また,その組成依存性は上に凸の放物線的な関数であることを示すとともに,波長依存性は負であることを明らかにした。自由電子モデルに基づいて計算した結果,計算値は測定値の温度及び組成依存性を表現していた。また,絶対値の差であるd電子の寄与は波長のみに依存すると近似することができ,これらのことより,Ni-Cu2元系液体合金の放射率を温度,組成及び波長の関数として定式化した。 (4)Ni-Cr2元系液体合金の放射率を上記と同様に測定した。放射率の温度係数及び波長依存性はNi-Cu系と同様であったが,組成依存性に関しては,特に短波長域において,80at%Ni付近で極小値を取ることを明らかにした。また,この系の場合には,Ni-Cu系と同様の手法では,放射率の推算式を作成することはできなかった。
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