2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14350405
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSTY |
Principal Investigator |
横山 千昭 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50150256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊原 学 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90270884)
山下 善之 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60200698)
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Keywords | 圧力 / 結晶成長 / 相分離 / 蛋白質 / 急速膨張法 / 準安定相 |
Research Abstract |
本研究で得られた成果の概要について以下に述べる。 1 蛋白質水溶液の熱物性測定 加圧下における蛋白質水溶液の相平衡、粘性率などの物性測定装置により熱物性の測定を行った。蛋白質にはリゾチームを用いた。その結果、飽和濃度を越えた過飽和状態での溶液の粘性率の測定に成功した。得られた結果より、粘性率については飽和状態を越えても、未飽和状態からスムースに外挿できることが判明した。また、加圧下で、昇温操作により結晶を融解消滅させる方法を用いて、飽和溶解度を測定した。得られたデータから過飽和度を決定することができた。一方、一定温度下で圧力を変える方法により、飽和溶解度の決定を試みたが、過圧縮現象によるヒステリシスのため、正確な溶解度を得ることが出来ないことも分かった。 2 核発生速度の測定 一定温度、加圧状態下に蛋白質の過飽和溶液を静置させることにより、蛋白質の核発生を促し、生成する核の個数を測定することにより、核発生速度を決定した。その結果、リゾチームの場合には、核発生速度は圧力増加に伴い急激に減少することが分かった。核発生速度の圧力依存性、粘性率依存性の解析より、物質移動が核生成の律速段階であることが分かった。今回測定条件として設定した過飽和度条件では核発生速度は過飽和度にはほとんど依存していないことも分かった。また、高圧下では核発生速度は減少するが、形成した小数の核が成長するため、大気圧下では得られないような大きな結晶を育成出来た。 3 微小結晶の育成 加圧状態の過飽和溶液をノズルから急速膨張させることのできる装置を作成した。この装置を用いれば、液液相分離した溶液を原料に用いて連続的に蛋白質の微結晶の製造が可能となる。装置の健全性を調べるためはじめにアスピリン、ナフタレンなどの低分子量化合物による微結晶の製造を試み、操作条件の最適化を行った。次にリゾチーム水溶液と二酸化炭素の混合溶液を急速膨張させ微小結晶の製造を試みた。リゾチーム濃度を調節すれば、微小結晶を高速に製造できることが分かった。 4 蛋白質結晶の育成において、圧力を操作条件とすることにより、準安定な過飽和状態の利用が可能になった。結晶サイズを大きくするには静水圧下での操作が有効であり、微結晶の育成には急速膨張法が有効である。
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