Research Abstract |
本研究では、高速で回転する多孔質体を利用して,反応物質を含む液滴(ミスト)を急激に混合することにより,半湿式で粒径のそろった大量のナノサイズ粒子を製造することを目的としている。高速で回転する多孔質内では,孔壁面に付着したミストが剪断力により引きちぎられると考えられる。そこで,まず予備実験として径0.5mmの毛細管にアトマイザで発生させたミストを高流速で通すことで,ミストの分散がどの程度進行するかを調べた。その結果音速まで上げても,平均径で1.1μmから0.7μm程度しか微細化されなかった。次に,ステンレス製の凝集粒子からなる円筒状の多孔質体(孔径70,100μm,直径100mm)を用いて,回転多孔質体反応器を試作した。分散させる試験液として,NaCl水溶液,PAO(poly alpha olefin)を用いた。まず,アトマイザにより噴霧されたミストを多孔質体の円筒の中心部から供給し,回転する多孔質体の外側から出てくるミストの粒度分布をSMPS(走査型粒度分布測定器)により測定した。また,粒子の分散状態を調べるために,電圧の印加した平行平板電極にミストを通して透過率を測定し,帯電量分布を求めた。その結果,9000rpmでNaCl aq.の場合は1.1μmから0.4μm, PAOは0.26μmから0.12μmまで平均径が減少した。一方,回転数の増加による平均径の減少とともに個数濃度も減少した。これは,多孔質体を囲むハウジングの内壁に大半の粒子が沈着したためと考えられる。また,帯電量分布の測定結果では,PAOはほとんど帯電していないのに対して,NaCl aq.では回転数の増加とともに平均帯電数が増加した。以上のように,ある程度のミストの微細化が可能であることが示されたが,当初予想していたのに比べて十分な成果が得られなかった。この理由として,多孔質体の底部に隙間があるため,その部分から多くの供給ミストが,多孔質体内部を通過することなく漏れ出ている可能性がある。今後は,供給ミストが全量多孔質体を通過するように改良するとともに,水系の溶液と親油性の溶液を同時に噴霧することで,気相中でエマルジョンの形成が可能かどうかを確認する予定である。
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