Research Abstract |
これまでに,monoaltro-β-cyclodextrinの2^A-SH置換体(1),3^A-SH置換体(2)3^G-SHおよびA,B-dialtro-β-cyclodextrin(A,B-DACD)の3^G-SH置換体であるホスト分子を合成してきた。 今年度では,DACDの位置異性体AB,AC,AD体が平板状分子骨格の2-naphthalenesulfonate(Ns)をその空洞に捕捉し,自由回転を束縛し配向を規制することをNMRで明らかにし,この知見に基づき同じ分子形状のスルホニル化剤NsClを水中で異性体AB,AC,AD体それぞれに反応させ,それぞれから2^A-O,2^A-O,2^D-O-スルホニル化体を選択的に入手し,それぞれを2,3-alloepoxy体とした。これらを原料にしてSH基の導入を現在行っている。一方,2,3-mannoepoxy-β CDから立体反転を伴うepisulfide化に成功し2,3-alloepithio-β-CDを合成した。これを銀イオンで処理して2-OHがSHに置換したmono-3,6-anhydro-2-thio-β CD(3)を入手した。これら楕円に変形した空洞をもつホスト分子1,2,3のSHのpKaは,それぞれ7.8,8.2,9.6であることを明らかにした。通常のRSH(pKa 11-12)とは異なって,これらの官能基は中性で解離でき,十分な活性を示すと期待された,事実,β-CDがpH9.0緩衝液中,25℃ではp-およびm-nitrophenyl acetateを分解できないのに対し,p-nitrophenyl acetateについては1,2,3は緩衝液自体が示す反応速度の1700,170,170倍,m-nitrophenyl acetateに関しては860,150,2300倍ものk_cを示した。基質の自由回転を許すと予想されるβ-CD-2-SH,β-CD-SHを数倍凌駕する値であったことから,基質の自由回転の阻害,配向制御が反応の加速をもたらしたと言う点で注目に値する。
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