2003 Fiscal Year Annual Research Report
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14350487
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和田 健彦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20220957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70311769)
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Keywords | 光化学 / 不斉合成 / 超分子不斉光化学反応 / エナンチオ区別 / ヒト血清アルブミン / 不斉反応場 / 不斉光化学反応 / キラリティー制御 |
Research Abstract |
本研究は、現在新しい不斉合成法として注目されている超分子不斉光反応の反応場として生体高分子を「不斉反応場」として用い、取り込んだ光反応基質や増感剤による不斉光反応を行うことにより、高効率な不斉光反応を達成しようとするものである。 昨年度はウシ血清アルブミン(BSA)を反応場とする2-アントラセンカルボン酸(AC)の不斉光環化二量化反応において、41%の比較的高いエナンチオマー過剰率(ee)が得られ、血清アルブミンが有効な不斉反応場として利用できることを報告した。反応機構や反応サイトの解明は重要であるが、BSAはアミノ酸の一次配列が明らかにされているのみで、立体構造・結合サイトなどに関する情報は乏しい。本年度は立体構造はもちろん、様々な基質に対する結合サイトや結合定数、結合挙動に関する情報が豊富なヒト血清アルブミン(HSA)を不斉反応場とするACの不斉光環化二量化反応を検討した。本年度はタンパクの持つ不斉環境を用いて超分子不斉光反応を検討した。ウシ血清アルブミン(BSA)およびヒト血清アルブミン(HSA)は、入手が容易な単純ペプチドであり、種々の芳香族カルボン酸類をキラルな結合部位に取り込むことが知られており、不斉反応場として機能する可能性を有している。これまで、タンパクの持つ不斉反応場を用いた酵素反応や熱反応は多くの報告がなされているが、光反応に応用された例は少ない。一方、アントラセン誘導体の光環化二量化反応は古くから知られており、1位または2位に置換基を有するアントラセン誘導体の[4+4]環化二量体には4種類の位置異性体が生成し、そのうち2つには光学異性体が存在する。AC濃度を一定とし、HSA濃度を変化させて光反応を行なった系の生成物比、転化率、eeを表に示す。二量化反応は水中に比べやや遅くなるものの、比較的良好に進行した。生成物比に着目すると、HSA存在下では、HT生成物(1+2)が水中より優先的に生成した。一方eeついては2で最高76%ee、3で75%eeという高いeeが得られ、HSAが効果的な不斉反応場として機能することが明らかとなった。さらに4-ヨード安息香酸やワルファリンなど、HASに対する結合サイト・結合挙動が報告されている化合物存在下でACの不斉光環化二量化反応につて検討することによりHAS存在下でのACの光反応機構に関する検討も行った。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Wada, T., Nishijima, M., Fujisawa, T., Sugahara, N., Mori, T., Nakamura, As., Inoue, Y.: "Bovine Serum Albumin-Mediated Enantiodifferentiating Photocyclodimerization of 2-Anthracenecarboxylate"J.Am.Chem.Soc.. 125. 7492 (2003)
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[Publications] Wada, T., Asaoka, S., Inoue, Y.: "Microenvironmental polarity control of electron-transfer photochirogenesis. Enantiodifferentiating polar addition of 1,1-diphenyl-1-alkenes photosensitized by saccharide Naphthalenecarboxylates"J.Am.Chem.Soc.. 125. 3008 (2003)
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[Publications] Saito, H., Mori, T., Wada, T., Inoue, Y.: "Diastereoselective [2+2] Photocycloaddition of Stilbene to Chiral Fumarate. Direct versus Charge-Transfer Excitation"J.Am.Chem.Soc.. 126(印刷中). (2004)
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[Publications] Wada, T., Sato, H., Inoue, Y.: "External Reversible Control of Recognition Behavior of α-Peptide Ribonucleic Acids (α-PRNA) through anti-syn Orientational Switching of the Nucleobase Induced by Borate Esterification of the cis-2,3-Diol"Biopolymers ; Peptide Science. (印刷中). (2004)
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[Publications] Sato, H., Wada, T., Inoue, Y.: "Synthesis and Conformation Control of Peptide Ribonucleic Acid (PRNA) Containing 5'-amino-5'-deoxyribopyrimidineand 5'-amino-5'-deoxyribopurinenucleosides"J.Bioactive Compatible Polym.. (印刷中). (2004)
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[Publications] Sato, H., Hashimoto, Y., Wada, T., Inoue, Y.: "Solid-phase synthesis of peptide ribonucleic acids (PRNA)"Tetrahedron. 59. 7871 (2003)
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[Publications] Wada, T, Sato, H., Inoue, Y.: "A novel strategy for reversible control of conformation and DNA/RNA recognition of peptide ribonucleic acid (PRNA) by external factors"Nucleic Acids Res.Suppl.. 3. 213 (2003)
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[Publications] 和田健彦(分担執筆): "ペプチド核酸の新展開-外部因子による核酸認識制御機能を有する核酸モデル(PRNA)の設計・合成・機能-"バイオマテリアル. 300 (2003)