2004 Fiscal Year Annual Research Report
ソーラープローブの熱防御システムに関する熱気体力学的研究
Project/Area Number |
14350508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏二郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (10226508)
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Keywords | ソーラープローブ / 太陽コロナ / 太陽風 / 輻射加熱 / 熱防御システム / グラファイト / 昇華 / 希薄気体力学 |
Research Abstract |
太陽コロナに突入し、太陽風加速機構を"その場観測"によって明らかにする新しい探査機"ソーラープローブ"を実現するため、厳しい輻射加熱環境から機体を守る熱シールドに関する熱気体力学的現象の解明を目的として研究を行った。本年度の研究により、以下のことが明らかになった。 1)熱シールドから昇華ガスを発している探査機まわりの太陽風流れに関し、モンテカルロ直接法(DSMC法)による希薄気体力学解析を行った。太陽方向に対し約45度傾けたグラファイト製の主ディスクと、その後方に設置した小型副ディスク、および衛星本体で構成される探査機全機形状を考慮した。その結果、太陽風の観測に際して、昇華ガス雲と太陽風の干渉だけでなく、機体表面における太陽風粒子の反射の影響も無視できないことがわかった。精度の高い太陽風観測のためには、熱シールドからの昇華ガス発生量を小さくするだけでなく、センサーを両者からの干渉が少ない本体底面からブームを伸ばした先端に置くことが重要である。 2)炭素薄板をレーザーで加熱し、発光スペクトル観測から温度測定を行った。薄板状の炭素が、ソーラープローブ熱シールド材料として耐熱性と低昇華率の点で優れていることを明らかにした。ディスク状の炭素板背後に衛星本体を置く手法は、衛星本体への熱流入の低減に有効であることを実験的に示した。 3)小型ソーラープローブミッションについて検討した。探査機の推進システムとして燃料不要のソーラーセイルを取り上げて軌道設計を行い、5年以内に地球から太陽コロナに至ることが可能であることを示した。さらに、支柱の不要な構造として、内圧をかけて膨張するグラファイトフィルムを用いたバルーン型熱シールドを提案し、熱防御性能、昇華ガス発生量、軽量性の全てにおいて従来型の熱シールド形状と比較して有望であることを示した。 以上をもって本研究は終了とし、成果のまとめを行った。
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