2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14360011
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大場 伸也 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80221836)
|
Keywords | 種子散布 / 自然下種栽培 / 台風被害 / 脱粒性 / 収量損失 / ソバ |
Research Abstract |
脱粒性は、植物の基本特性の一つであり、野生植物においては種子散布のメカニズムとして需要であるが、栽培作物では収量の損失に結びつくため望ましくない。これまで、収量損失の実態調査として農家圃場で調査を行い、気象条件や不適切な刈り取り時期によって大きな損失が発生することを見てきた。本年度は脱粒した種子の動態と有効利用の方策について検討し、ソバの自然下種栽培の可能性を調査した。 平成16年9月に岐阜県飛騨地方は台風の襲来を受け、ソバ栽培圃場は甚大な被害を受けた。この時、脱粒によって損失した割合を調査したところ、結実した種子の50%を超え、大量の種子が圃場に散布された。この種子散布量は、約20kg/10aに相当し、慣行栽培の5kg/10aを大幅に超えた。これら種子の発芽動態を調べたところ、秋の間に多くの種子が発芽した。しかし、収穫時期別に発芽動態を調べたところ、秋が深まり気温が低いほど発芽率は低かった。調査地域は豪雪地であり、雪解けを待って翌春に生存種子の発芽を調べたところ、脱粒種子の約8%であった。この時、脱粒後の秋に一度耕した圃場と耕さなかった圃場では、生存率に差はなかった。また、春の発芽に際しては、発芽直前の時期に耕起すると一斉に発芽する傾向があった。また、耕起を行うと雑草の発生を大幅に抑制することができた。収量は、慣行栽培と大差なく、大量の脱粒があった場合には収量を十分確保できる場合のあることがわかった。さらに、夏に生育したソバを8月下旬に収穫し、この時に脱粒した種子を利用した秋作での自然下種栽培についても検討した。脱粒後に一度耕した区と耕さなかった区では、雑草の発生に大きな差が見られ、耕すことで雑草量が少なくソバの植物体が大きく生育した。収量も、慣行栽培として種子を播種した区と差はなく、十分な収量が得られた。自然下種栽培は、牧草などの一部の作物では試されているが、普通作物での利用は少ない。本研究では、脱粒によって発生した脱落種子を有効利用するため自然下種栽培を検討した結果、この栽培方法が可能であることがわかった。
|