Research Abstract |
植物キチナーゼは植物の病気抵抗性レスポンスにおいて重要な役割を持つと推測されている。本研究の目的は,成熟期のブドウ果実に発現するキチナーゼを分離・精製し,酵素学的性質そして植物病原菌に対する抗菌作用を検討し,病害抵抗性レスポンスにおけるキチナーゼの役割を明らかにすることである。 平成16年度は,次の2つ研究成果を得た。 1.キチナーゼのブドウ病害菌に対する作用:マスカット・ベリーA果皮から分離したキチナーゼ画分CHI-1とCHI-2を灰色カビ病菌と晩腐病菌に作用させ,その生育阻害作用を検討した。灰色カビ病菌はPDA培地上の菌糸の広がり,晩腐病菌はブドウ果汁培地での菌体重量の増加により生育を測定した。CHI-1およびCHI-2ともに両病害菌の生育を阻害し,その効果は酵素濃度に依存していた。 2.キチナーゼアイソザイムのブドウ品種間比較:病害抵抗性の異なる4ブドウ品種,マスカット・ベリーA(MBA),甲州(KOS),カベルネ・ソービニヨン(CAS),シャルドネ(CHA),の果皮に含まれるキチナーゼの活性は,MBA,KOS,CAS,CHAの順に強かった。これらブドウの果皮抽出液のキチン結合画分を陽イオン交換体により分離した結果,MBAとCASは二つのピーク(CHI-1とCHI-2)が検出されたが,KOSはCHI-2のピークが小さく,CHAはCHI-1のピークのみが検出された。CHI-1の電気泳動パターンを品種間で比較すると,MBAが4つ(CHI-1a,CHI-1b,CHI-1c,CHI-1d),CASとCHAが2つ(CHI-1b,CHI-1c),KOSが1つ(CHI-1b)のタンパク質染色バンドを示した。病害抵抗性の強いMBAの果皮では,キチナーゼ種類および量ともに多く発現していた。以上の結果は,キチナーゼが病害抵抗性の主要物質であることを示唆している。
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