2003 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌におけるアブシシン酸生合成の有機化学的分子解析
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14360065
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 伸博 京都大学, 国際融合創造センター, 助教授 (00165151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川出 洋 東京農工大学, 農学部, 助手 (20291916)
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Keywords | アブシシン酸 / 生合成 / 糸状菌 / Botrytis cinerea / イオニリデンエタン / cytochrome P450 monooxygenase |
Research Abstract |
昨年度、糸状菌Botrytis cinereaを用いて^<18>O_2によるABAの標識実験を行い、全ての酸素が^<18>Oで標識されることを明らかにしたが、この標識は呼吸により生じたH_2^<18>Oに由来する可能性があった。そこで、H_2^<18>Oによる標識実験を行った結果、水由来の^<18>Oは取り込まれないことが判明した。この結果、ABAの全ての酸素は分子状酸素に由来することが確実となった。同菌の代謝産物2E-allofarnesen,2Z-allofarnesene,2E-γ-ionylideneethne,2Z-γ-ionylideneethaneの^<13>C標識体の投与実験を行ったところ、それぞれ0.7,0.2,2.6,17.1%の取り込み率でABAに変換された。これらの結果より同菌では、イソペンテニル二リン酸から生じたファルネシル二リン酸が1位のメチル基への還元、4位の不飽和化、2位の異性化および環化を受けて2Z-α-ionylideneethaneになり、これが分子状酸素によって酸化されてABAになることが強く示唆された。Cercospora cruentaも同様の結果を示した。以上より、糸状菌のABA生合成経路は傘経路を通じて植物とは異なっていることが確実となり、糸状菌はABA生合成遺伝子を植物とは独立に獲得したことが初めて明らかになった。 テルペン環化反応を阻害するAMO-1618,CPTA,FC-907を用いて、ABA生産に対する影響を詳細に調べたが、いずれも影響を及ぼさなかった。そこで,プローブとなる遺伝子断片の取得をcytochrome P450 monooxygenaseに絞り、PCRによる断片の取得を試みた。これまでにB.cinerea由来のP450はeburicol-14α-demethylase以外に報告はなかった。そこで、これを増幅させることなくテルペン炭化水素骨格上に酸素添加反応を行うP450の特異的縮重プライマーを設計し、ゲノムDNAを鋳型にPCRとそのPCR産物を丹念に解析した。その結果、ジベレリン生産菌由来のent-カウレン酸化酵素の部分配列をコードする遺伝子断片と優位な相同性を持つ断片(約900bp)の取得に成功した。今回得られたB.cinerea由来のP450様遺伝子断片がent-カウレン炭化水素の20位メチル基をカルボン酸へ変換する酵素との類似性を示したことは、上記の実験結果を支持し、ABA生合成中間体を基質にした酸化反応に関与することが強く示唆された。
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