2004 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の生産性向上を目的とした生体膜機能の改良に関する研究
Project/Area Number |
14360089
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小林 善親 九州大学, 農学研究院, 教授 (90087594)
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Keywords | 光合成 / 炭酸同化 / 電子伝達 / 樹木 / 脂肪酸 / FAD遺伝子 / クスノキ / タバコ |
Research Abstract |
大気中の炭酸ガス濃度(350ppmCO_2)のもとで常緑樹の最大光合成活性(CO_2吸収速度)が落葉樹や草本植物に比べて著しく低い原因を明らかにするため、15種類の常緑樹、落葉樹、草本植物を用いて、光合成・光呼吸・電子伝達・CO_2の膜透過性・脂肪酸組成を調べるとともに、樹木(クスノキ)の脂肪酸合成に関わる樹木特有の新規遺伝子(FAD7-1,FAD7-2)を単離し、その発現制御機構を解析した。さらにこの遺伝子をタバコに組み込み、形質転換体を作製した。 (1)初年度は、葉の構造やCO_2濃度勾配、CO_2膜透過性などに注目し、ユーカリを含む常緑樹葉における光合成律速因子を探索した。次に、葉における光合成量子収率とCO_2ガス交換の同時測定によって葉緑体を流れる電子の流速を定量的に測定し、15種の樹木や草本葉の光合成能力について、量子収率、最大電子伝達能力、最大光合成速度、葉緑体ストロマ中のCO_2濃度を測定した。これによって、植物の葉肉細胞のCO_2透過性を比較することが可能になった。 上記の電子流速測定および脂肪酸測定によって、樹木(落葉樹、常緑広葉樹)および草本植物の多価不飽和脂肪酸(16:3、18:3)の相対含量と葉のCO_2透過性との関係を調べた。このような光合成機能解析から、植物の最大光合成活性と葉のトリエン脂肪酸(18:3)含有率との間には比例関係があることを見出した。一方、飽和脂肪酸(16:0)含有率と最大光合成活性との間には反比例の関係があることを見出した。また飽和脂肪酸(16:0)とCO_2透過性(葉のCO_2コンダクタンス)との間にも反比例の関係が認められた。これらの結果から、大気炭酸ガス濃度のもとで、葉の光合成は葉肉細胞のCO_2透過性によって律速されていることが明らかとなった。葉肉細胞のCO_2透過性は、生体膜の流動性(膜のかたさ)に影響されると考えられる。 以上の結果をもとに、樹木で見出したFAD7-1,FAD7-2を用いて、モデル植物(タバコ)の不飽和脂肪酸(16:1、16:2、16:3、18:1、18:2、18:3)含有率を増加させる遺伝子操作、および飽和脂肪酸(16:0、18:0)のうち量的に多い16:0の含有率を減少させる遺伝子操作を行った。現在、多数の組み替え体を用いて光合成と脂肪酸との関係を解析している。本研究により、葉の炭酸ガス透過性を変えることにより樹木の光合成能力を改良できる可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Chlorophyll formation and photosynthetic activity in rice mutants with alterations in hydrogenation of the chlorophyll alcohol side chain.2004
Author(s)
Shibata, M., Mikota, T., Yoshimura, A., Iwata, N., Tsuyama, M., Kobayashi, Y.
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Journal Title
Plant Science 166
Pages: 593-600
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より
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