2004 Fiscal Year Annual Research Report
小笠原島嶼の移入樹種の分布拡大メカニズムの解明と森林の保全管理手法の開発
Project/Area Number |
14360091
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石田 厚 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域・樹木生理研究室, 室長 (60343787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 直子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所・森林育林研究グループ, 研究員 (70353901)
中野 隆志 山梨県環境科学研究所, 植物生態研究室, 主任研究員 (90342964)
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Keywords | キバンジロウ / ウラジロエノキ / 耐乾性 / キャビテーション / パノレス / 安定同位体 / 浸透調節 / LMA |
Research Abstract |
小笠原の父島に生育する約30種類の植物種について、葉の光合成、気孔コンダクタンス、葉の炭素と窒素の安定同位対比を測定し、また葉の回転率の測定を去年に引き続き行った。デルタ13Cは気孔や葉内抵抗と光合成とのバランス(水利用効率)、デルタ15Nは大気と土壌からの窒素利用や葉の窒素同化とのバランス(窒素利用様式)の指標である。結果は、LMAと葉の窒素濃度とは強い負の関係、LMAとデルタ13Cに正の関係、葉の窒素濃度とデルタ15Nにも正の関係が見られた。しかしデルタ13Cとデルタ15Nの間には有意な相関は見られなかった。これらのデータから水利用と窒素利用の仕方、及び葉の形質(LMAや窒素含有率など)との関係、資源利用に関する種間に違いがあることがわかってきた。来年度(平17年度)に当プロジェクトが終了するため、水や窒素の利用の仕方と葉の回転率との関係も出せる予定である。 また室内実験において、土壌の発達した谷部に多く見られる先駆性樹種のウラジロエノキと、谷部から乾燥した尾根部にまで見られる移入樹種のキバンジロウの稚樹を用い、乾燥耐性、及び乾燥時に水をパルス的に与えた時の水利用特性を比較した。キバンジロウは、小笠原のみでなくハワイ島にも侵入し、分布拡大に成功している樹種である。結果は、キバンジロウは、葉の浸透調節能力の高さ、導管のキャビテーションの起きにくさから耐乾燥性が強いことがわかった。一方ウラジロエノキは反対に乾燥耐性が低く、長期的な乾燥には弱かった。しかし緩やかな乾燥時にパルスに水を与えると、数時間でキャビテーションは回復し、与えられた水を素早く利用し気孔を開き光合成ができることがわかった。来年度も引き続き野外での調査、及び室内実験での移入樹種の変動環境下での資源利用特性を調べる予定である。
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Research Products
(1 results)