2003 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類卵子における遺伝子発現プログラムの初期化機構の解明
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14360164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 不学 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (20175160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 仙吉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80114487)
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Keywords | 遺伝子発現リプログラミング / 核移植 / ヒストンアセチル化 / ヒストン脱アセチル化酵素 / 減数分裂 / 初期胚 |
Research Abstract |
本年度は、まず遺伝子発現リプログラミングとヒストン脱アセチル化の関連を調べるために、体細の核を未受精卵に移植し、様々なヒストンのアセチル化状態の変化を、特異抗体を用いた免疫染色法によって調べた。体細胞核は未受精卵に移植されることによりリプログラムされることがクローン動物作成の成功によって明らかにされている。具体的には分裂間期あるいは分裂期にあるNIH3T3細胞の核を除核した未受精卵に移植し、ヒストンH3のlysine 9,14、およびヒストンH4のlysine5,8,12,16におけるアセチル化状態の変化を調べた。 その結果、分裂間期および分裂期のいずれの核においても、移植後にはすべてのヒストンのlysine残基が脱アセチル化されることが明らかとなりた。また、この脱アセチル化はヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase, HDAC)の阻害剤であるトリコスタチンAによって阻害された。これは、HDACが遺伝子発現リプログラミングに関与することを示唆する結果であり、そのメカニズムとして、HDACが減数分裂特異的にクロマチンヒストンに作用できるようになることが考えられた。 そこで、次に減数分裂期の卵におけるヒストン脱アセチル化酵素の発現・局在を免疫染色法で調べた。その結果、HDAC1がGV期卵で発現していることが明らかとなった。HDAC1は体細胞では分裂間期には染色体上に検出されるが、分裂期には染色体から離れて検出されることが報告されている。そこで、その追試験を行い、同様の結果が得られることを確認した後、減数分裂期の卵におけるHDAC1の局在変化を調べた。その結果、GV期卵では核内に存在しているものの、DNAとは離れた位置に局在しているが、減数分裂期に入ると一時的にDNA上に局在することが明らかとなった。これらの結果は、減数分裂期特異的にHDAC1をクロマチン上にリクルートする機構が存在し、それが遺伝子発現リプログラミングに関与していることを示唆するものである。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Liu, H., Kim, J-M., Aoki, F.: "Regulation of histone H3 lysine 9 methylation in oocytes and early preimplantation embryos."Development. (in press). (2004)
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[Publications] Liu, H., Aoki, F.: "Meiotic competence of mouse oocytes reconstructed by replacing the germinal vesicle with a male pronucleus and somatic nucleus."Anim.Sci.J.. (in press). (2004)
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[Publications] Ito, M., Nakasato, M, Suzuki, T., Sakai, S., Nagata, M., Aoki, F.: "Localization of Janus Kinase 2 to the nuclei of mature oocytes and early cleavage stage mouse embryos."Biol.Reprod.. (in press). (2004)
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[Publications] Hara T.K., Sakuma, Y., Sakai, S., Nagata, M., Aoki, F.: "Dynamic changes in the expression of protein tyrosine phosphatases during preimplantation mouse development: semi-quantification by real-time PCR."J.Reprod.Dev.. 49. 323-328 (2003)
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[Publications] Kim, J-M., Liu, H., Tazaki, M., Nagata, M., Aoki, F.: "Changes in histone acetylation during mouse oocyte meiosis."J.Cell Biol.. 62. 37-46 (2003)
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[Publications] Aoki F., Hara, T.K., Schultz, R.M: "Acquisition of transcriptional competence in the 1-cell mouse embryo : requirement for recruitment of maternal mRNAs."Mol.Reprod.Dev.. 64. 270-274 (2003)