2003 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物の卵/初期胚特異的な細胞周期の体細胞への導入を目指した制御要因の解析研究
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14360173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 邦彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20188858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 和広 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00192188)
青木 不学 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (20175160)
東條 英昭 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20041668)
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Keywords | 哺乳動物卵子 / 減数分裂 / 初期胚発生 / 細胞周期 / MPF / Rb / Mos / antisense RNA |
Research Abstract |
本研究では卵が行う特殊な細胞周期を体細胞に導入することを最終的な目標とし、卵の発生制御機構を探ることを目的としている。昨年度のブタ卵を用いた研究では、減数分裂のS期を介さずにM期を2回繰り返す現象に、卵が持つ巨大な核である卵核胞が必要であり、これが無い場合は本来抑制されるべきcyclin B1の分解が抑制せず、1回のM期の後S期が起こることを明らかにした。本年度は、このcyclin B1分解抑制に関与していると考えられるMAPK経路について検討した。一般にMAPK活性を抑制すると、同様の現象が起こることが知られ、この原因はMAPKがcyclin B1の分解を抑制するためと考えられている。そこでMAPK経路の上流因子であるMosのantisense RNA注入およびMosの下流であるMEKの構成的不活性変異体のmRNA注入によりMAK活性の抑制を試みた。その結果、驚くべきことにMAPK活性を抑制するとcyclin B1はむしろ蓄積することが明らかになった。すなわち、哺乳動物ではcyclin B1の分解抑制を解する減数分裂制御機構が従来考えられていたより複雑であることが予想され、新たな制御機構解明の必要性が示唆された。一方、これに続く初期胚の卵割では、1回の細胞周期に要する時間が短い、体細胞分裂の進行に不可欠な増殖因子の添加なしに細胞分裂が進行する、といった特徴を持つ。昨年度のマウス胚を用いた研究から、この要因はM期の後直ちにS期が開始するためであり、これは体細胞でS期への進行を抑制しているRbという因子を初期胚が持たないためである可能性を示唆した。本年度は、Rbの重要性を確認するために、Rb上流のMAPK経路の関与を、MAPK上流のMEKの構成的活性型変異体と不活性型変異体の発現ベクターを核内に注入し、人為的にマウス初期胚のMAPK活性を変化させて卵割に対する影響を検討した。その結果、MAPKは活性化させても、あるいは抑制しても卵割には全く影響を及ぼさないことが確認された。この結果は、卵割特異的な発生制御がRbの欠損によるものであることを強く支持するものとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ohashi Satoshi: "Analyses of mitogen-activated protein kinase function in the maturation of Porcine oocytes."Biology of Reproduction. 68. 604-609 (2003)
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[Publications] Kuroda Takao: "Localization and Function of cyclin B1 and cyclin B2 during porcine oocyte maturation."Journal of Mammalian Ova Research. 20. 93-98 (2003)
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[Publications] Haraguchi Seiki: "Specific gene silencing in the pre-implantation stage mouse embryo by an siRNA expression vector system."Molecular Reproduction and Development. (in press). (2004)
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[Publications] Kuroda Takao: "Analysis of the roles of cyclin B1 and cyclin B2 in porcine oocyte maturation by inhibiting synthesis with antisense RNA injection."Biology of Reproduction. 70. 154-159 (2004)
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[Publications] 内藤 邦彦: "動物生殖学:(受精と初期胚の発生 担当)"佐藤英明編、朝倉書店、東京. 225 (2003)