Research Abstract |
SPFの猫6頭にB.henselae株を皮内投与し,血中の菌数と各種免疫応答との関連について検討した。菌投与後,7〜84日目にかけて全ての猫で菌血症(1〜1.2×104CFU/ml)が確認され,B.henselaeに対する特異的IgG抗体価は上昇し,血中の菌の収束とともに抗体価も減少した。菌投与後のCD4陽性T細胞数は,菌投与前に比べ40〜60%まで減少した。IFN-γ,IL-4,TNF-α,IL-10およびTGF-βmRNA発現量も菌投与前に比べ33%〜85%に減少したが,IL-12p40は216%に上昇した。以上の成績から,本菌に感染した猫ではCD4陽性T細胞数が減少し,T細胞由来サイトカインであるIFN-γ,IL-4,TNF-α,IL-10の産生が減少したと考えられた。しかしながら単球由来のIL-12の産生は亢進し,Th1を誘導していると考えられた。血中の菌の出現とともにIFN-γ,TNF-α,IL-12p40,IL-10およびTGF-βmRNA発現量は,投与前に比べ110〜390%と著しく増加した。菌血症時の血中平均菌数と菌血症の各ステージにおける各種サイトカインmRNA発現量の増減率の相関関係を検討したところ,血中平均菌数が多いほど菌血症時と菌排除時におけるIFN-γの発現量が多くなった(R^2=0.718,0.733)。これより,本菌の刺激によって特にTh1が強く誘導されると考えられた。さらに,菌血症時におけるTNF-αの発現が少ないほど血中平均菌数が多くなったことから(R^2=0.501),菌の排除にはTNF-αの発現が重要であることが示された。以上の成績から,猫体内におけるB.henselaeの排除には,細胞性免疫が重要な働きをするものと考えられた。 B.henselaeのGroEL(60 k Da)組換え蛋白質の血清診断用抗原としての有用性について検討した。B.henselae(Houston-1株)のgroELをGST融合蛋白質(GroEL/GST)として発現・精製し,その抗原性を全菌体抗原と併せてウエスタンブロッティング(WB)で検討した。B.henselae菌体を抗原としたWBでは,全ての感染猫血清において20から258kDaの間に約25種類のバンドが検出された。このうち,28kDaと58kDa(GroEL)は全ての感染猫血清に検出された。以上から,猫に対しては特定のサブユニット蛋白質(28kDaまたはGroEL)が血清診断用の抗原として有効であると考えられた。
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