葉面糸状菌、好熱性細菌群を活用した木質廃棄物及び家畜排泄物の再資源化

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14360197
• Research Institution: Chiba University
• Principal Investigator: 篠山 浩文 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (40211958)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 宍戸 雅宏 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (80302537) ; 石川 恵子 (財)日本園芸生産研究所, 主任研究員 (20212839) ; 坂本 一憲 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (10225807) ; 宮本 浩邦 (株)日環科学, 代表取締役 ; 塚越 覚 環境健康都市園芸フィールド科学教育研究センター, 助手 (40270863)
• Keywords: Pestalotiopsis / スギエダタケ / 木質廃棄物 / リグニン分解酵素 / 再資源化 / エピファイト / スギ / 配糖化

Research Abstract

(研究1)スギ林に生息するPestalotiopsis属糸状菌群による木質成分の利用性とスギ資源の有効活用
日本各地のスギ林より分離し、rDNA ITS領域塩基配列の解析により同定したPestalotiopsis属9菌株を、スギ、ブナ各木粉培地に植菌し、比較検討した。その結果、全菌株とも両木粉培地において良好に生育し、キシラン分解酵素およびマンナン分解酵素を著量生産した。またリグニン分解酵素のうちラッカーゼの生産性を示し、代表的な白色腐朽菌Trametes versicolorのおよそ1/3のリグニン分解能を示すことが明らかとなった。また、脱脂したスギおよびブナ材を用いて、リグニン分解能について検討した結果、全菌株で、脱脂スギ木粉培地においてリグニン分解能が未脱脂スギ木粉の場合と比べ上昇することが明らかとなった。このことは、本菌群のリグニン分解能が、スギ材に含まれる脂溶性成分により、何らかの影響を受けている可能性を示すものと思われた。次に、本菌群が生産するキシラン分解酵素およびマンナン分解酵素のカテコールを糖受容体としたときの配糖化活性を比較した。その結果、マンナン分解酵素よりキシラン分解酵素の配糖化能が強く、フェノール性化合物の解毒等にキシランが優先的に利用されていることが予想された。一方、植繊化材に対する本菌群の利用性について検討を加えた結果、生育度、糖質分解酵素生産性はスギ木粉培地の場合とほぼ同等であったが、リグニン分解能は3倍近く上昇することが明らかとなり、本菌群は植繊化材の脱リグニンに十分活用できるものと思われた。
(研究2)食用担子菌スギエダタケ(Strobilurus ohshimae)の子実体形成と酵素生産性について
本菌はスギ木粉培地で良好に生育することが明らかになっているものの、低温処理や菌掻き、冷水ショック等の処理では子実体形成を誘起できなかつた。一方、本菌は自然界において土に埋もれた落枝から多く発生することから、自然界で子実体の発生が認められた落枝を採取し、覆土し15℃で培養を続けたところ、再び子実体を形成した。このことから、覆土が、子実体発生の要因の一つであることを明らかにした。さらに、スギ木粉培地に本菌を接種し、菌糸がまん延した後、覆土して低温条件で培養を続けたところ、覆土してから100〜130日後に子実体の発生が見られ、本菌の人工環境下での子実体形成に成功した。次に、本菌の木材分解様式について研究を行った。本菌はスギ材において、木材の主成分であるリグニンを、30日で12.1%分解することを見出した。さらに、主なリグニン分解酵素であるリグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼの活性を調べたところ、ラッカーゼにおいて高い活性を検出した。ラッカーゼの研究は主に広葉樹を腐朽する菌でなされており、針葉樹を分解する本菌のラッカーゼの精製を試み、諸性質を他の菌と比較したところ、部分精製段階における見かけ上の分子量、等電点、Km値、基質特異性等は他の菌のラッカーゼと近い性質を示した。

Research Products

• [Publications] 篠山浩文: "木酢液の効果のヒミツ〜葉面微生物と農業現場の視点から〜"現代農業. 83・3. 136-141 (2004)
• [Publications] 篠山浩文: "葉面微生物の視点から木酢液の抗菌効果に迫る"別冊現代農業. 2004年4月号. 191-193 (2004)
• [Publications] 篠山浩文: "木酢液の病虫害抑制効果〜葉面微生物の動的変化からの解析"農業技術大系 土壌肥料編. 追録15号(印刷中). (2004)
• [Publications] 中西載慶: "微生物基礎"実教出版. 183 (2004)