2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14370061
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山泉 克 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (70107093)
|
Keywords | ヒトRAD18 / ゲノム不安定性 / 光線過敏症 / 精子形成不全 / 損傷乗り越え合成 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
複製後修復はDNA修復と共に種々のDNA損傷に対処し、ゲノム維持機構の重要な一翼を担う。DNA修復が損傷そのものを取り除いてゲノムを元の状態に回復するのに対し、複製後修復では損傷そのものは残した状態でDNA複製を完了させることを一義的な目的としており、両者の協調的関係がゲノム維持に重要である。RAD18遺伝子は出芽酵母の放射線感受性変異株より分離されたもので、複製後修復機構で中心的な役割を果たしていることが酵母の遺伝学より推定されていたが、その機能の実体については最近まで不明であった。我々は高等生物におけるRAD18の役割を解明するため、データベースを利用してヒト・マウスのRAD18遺伝子を単離した(hRAD18、mRAD18)。次に遺伝子破壊法によりRAD18ノックアウトマウスES細胞及びRAD18ノクアウトマウスを作製し、更にRAD18ノックアウトマウスよりRAD18欠損細胞株を樹立した。これらの材料を用いて、細胞レベル及び個体レベルでのRAD18の機能解析を試み、以下の新知見を得た。損傷乗り越え合成においてRad18蛋白はpolηと結合し、polηを複製停止部へ誘導するが、この誘導にRad18のDNA構造特異的な結合能が関与し、これにはRad18のもつSAPモチーフが重要である。RAD18欠損雄マウスでは、生後2ヶ月頃から不妊症となり、10ヶ月頃には精子形成が消失する。これは精細管内の精原細胞が何らかの異常で死滅することによる。RAD18欠損マウスはX線照射に感受性を示す。RAD18欠損細胞株でも弱いX線感受性を示し、これは細胞周期上G1期に特異的な現象である可能性が高い。Rothmund-Thomson症候群(RTS)は、光線過敏、不妊症を主徴とし、RAD18欠損マウスと類似した臨床所見をもつ遺伝性疾患である。RTSと診断された3症例につき、我々の開発した初代培養細胞を用いるDNA損傷後のPCNAのモノユビキチン化を指標とする、複製後修復異常の有無をみたが、これまでのところ異常は検出されなかった。
|