2004 Fiscal Year Annual Research Report
ボルナ病ウイルスの脳内局在部位と中枢神経系病態の多様性に関する研究
Project/Area Number |
14370102
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
辻 祥太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (30285192)
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / アルツハイマー病 / 運動器障害 / 熱ショック蛋白質 / HMGB1 / ストレス |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)感染が脳内で引き起こす病態機序を理解する目的で、培養細胞およびモデル動物を用いて、BDV p24リン酸化蛋白質(P蛋白質)の機能に着目した解析を行い、宿主の多機能因子(HMGB1)との結合を通してその機能を強く阻害していること、このP蛋白質を脳内で発現するトランスジェニックマウス(P-Tg)を作成したところ攻撃性の亢進、記憶・学習能力の低下を観察することができた。今回、BDV持続感染状態のストレス応答能低下について検討した。ラットへのストレス(LPSの腹腔内投与)により、非感染では正常を維持したがBDV持続感染ラットでは神経症状を誘発し、中脳における神経細胞死が認められた。また、C6(ラット由来グリア系)、OL(ヒト由来オリゴデンドロサイト系)、SK-N-SH(ヒト由来ニューロブラストーマ系)細胞、初代培養グリア細胞へのBDV持続感染により、熱ストレス、酸化ストレスなどを負荷した場合に、ストレス蛋白質HSP70のmRNAおよび蛋白質の発現量に顕著な低下が起こることが明らかになった。さらに、BDV持続感染細胞において恒常的なPKRの活性化が認められた。 HSP70は、神経細胞の保護、シナプス活性の保護、抗アポトーシス作用などの機能を発揮する。また、蛋白質のフォールディング作用を持ち、フォールディング異常病とされる神経変性疾患との関与も示唆されている。また、最近の報告からPKRの活性化が、アルツハィマー病患者脳の細胞死に対して促進的に働く重要な因子であるということが示唆されている。これらのことから、BDV持続感染によるHSP70の誘導発現の低下やPKRの恒常的活性化が、ストレス負荷時における神経細胞死へとつながると考えられた。
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Research Products
(2 results)