2004 Fiscal Year Annual Research Report
がん遺伝子診断の心理・社会的側面の同定および遺伝カウンセリングシステムの構築
Project/Area Number |
14370139
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岡村 仁 広島大学, 大学院・保健学研究科, 教授 (40311419)
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Keywords | 遺伝子診断 / 遺伝カウンセリング / 精神的負担 / 罪悪感 / 精神科診断面接 / HNPCC / FAP / 家族性乳がん / 卵巣がん |
Research Abstract |
目的:遺伝性腫瘍に関する遺伝子検査の結果開示1年後の心理・社会的影響を明らかにすること。 方法:遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)または家族性大腸腺腫症(FAP)の遺伝子検査を提示された20歳以上の者を連続的にサンプリングし、本研究の目的を説明後、文書による同意を得た。適格症例に対して、初回遺伝カウンセリング後(ベースライン)と遺伝子検査結果開示1年後の時点で精神科診断面接を施行し、精神的負担(大うつ病、小うつ病、Acute Stress Disorder : ASD、Posttraumatic Stress Disorder : PTSD)の有病率を検討した。また、開示1年後における罪悪感の有無、程度を面接調査した。 結果:ベースライン調査を行った65名中、45名(69%)が1ヵ月後調査を完遂した。1年後調査時に大うつ病、ASD、PTSDの基準を満たしたものはいなかったが、変異陽性の4名が小うつ病、3名がPTSD症状の基準を満たした。さらに、4名(変異陽性2名、陰性1名、情報不十分1名)が罪悪感を有しており、変異陽性の2名は子供に対しての罪悪感であった。遺伝子検査結果が陰性であった1名については、がんを発症している家族に対しての罪悪感であった。 結論:遺伝子検査の結果開示によって、長期的にも大うつ病やPTSDといった重篤な精神的負担は生じない。しかしながら、見過ごしてはいけない軽度の精神的負担を生じているものもおり、遺伝子検査の実施とその結果を開示する場合には、心理的反応に注意を払う必要があることが示唆された。また、罪悪感は遺伝子検査の結果にかかわらず、発端者にも未発症者にもみられたことから、両者に対して注意を払う必要があると考えられた。今後は、家族性乳がん/卵巣がんの遺伝子検査についても同様の検討を行う予定で計画を進めている。
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Research Products
(6 results)