2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌感染による胃病変発症の分子機構-胃細胞内へのピロリ菌CagA蛋白移行と細胞機能の撹乱-
Project/Area Number |
14370171
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
畠山 昌則 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅香 正博 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10113507)
東 健 神戸大学, 医学部, 教授 (60221040)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ菌 / CagA / トランスジェニックマウス / 胃癌 / ESXR1 / K-ras / 転写制御 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)菌の持続感染は慢性胃炎および消化性潰瘍発症に深く関わる。なかでもCagA蛋白を産生するピロリ菌は強い萎縮性胃炎を惹起することが知られ、疫学的研究から胃癌との関連が強く示唆されている。ピロリ菌由来発癌因子としてのCagAの役割を個体レベルで明らかにするため、cagA遺伝子トランスジェニックマウス作製を進めた。マウス個体におけるcagA遺伝子発現のためのプロモーターとして、広汎な体細胞における高レベルの遺伝子発現が期待されるSV40プロモーターならびに胃上皮細胞での特異的な遺伝子発現が期待されるプロトンポンプ(Na^+-K^+ ATPase)遺伝子プロモーターを用い、CagAを全身性あるいは胃粘膜上皮細胞(壁細胞)特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成に成功した。現在、樹立したcagAトランスジェニックマウスを用いて全身病変・消化管病変、特に胃における増殖性病変の有無を経時的に検討しており、今後、細胞癌化におけるCagAの役割をin vivoで明らかにする予定である。一方、胃癌発症には、複数の細胞内癌遺伝子、癌抑制遺伝子の遺伝的変化が不可欠と考えられ、中でもSHP-2の下流標的のひとつであるRasは胃癌を含む多数のヒト癌での異常活性化が知られている。このRasの持続的活性化は癌細胞の形質維持に必須であり、Rasの不活化を標的とする分子標的治療は癌治療に革新的な進展をもたらすことが考えられる。本年度の研究から、我々が新規ホメオドメイン蛋白として単離したESXR1が、ヒト癌で最も高頻度に機能獲得型変異が認められるk-ras遺伝子の転写活性化を特異的に抑制することを明らかにした。ESXR1の異所性発現により、k-ras変異をもつヒト癌の増殖が強く抑制されることが示された。
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