2003 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞への遺伝子導入によるX連鎖重症複合免疫不全症の遺伝子治療とその展開
Project/Area Number |
14370240
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
土屋 滋 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30124605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿南 和昭 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80343036)
峯岸 正好 東北大学, 医学部附属病院, 助教授 (20211592)
久間木 悟 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (20311566)
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Keywords | X連鎖重症複合免疫不全症 / 遺伝子治療 / 造血幹細胞移植 / ハプロタイプ不一致 / 骨髄非破壊的移植 / IL7Rα欠損症 |
Research Abstract |
「造血幹細胞への遺伝子導入によるX連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)の遺伝子治療とその展開」をテーマに研究を行った。この研究期間の最中にフランスのグループから、XSCID遺伝子治療を施行された11例の患者の中から白血病様症状が出現した2例の有害事象例の報告があった。この有害事象のために、我が国のX-SCID遺伝子治療は一時保留となっているが、最近再び再開を模索する動きが世界的に主流となっている。 今年度は昨年度に引き続き、1)アイソレックス300iを使用し、母親骨髄からCD34陽性細胞を純化し、HLAハプロタイプ不一致造血幹細胞移植を施行したXSCID患者の免疫能回復過程を追跡した。この方法はHLA不一致による重篤な移植片対宿主反応病を回避する上で有効である事が確認され、また、移植後の免疫能の回復にも有効であることが証明された。加えて、慢性肉芽腫症患者に対する骨髄非破壊的造血幹細胞移植も実施した。この方法は患者に対する前処置化学法の負担が少なく、背景に重篤な感染症や臓器障害が存在する患者への移植法に適している。この2つの方法を組み合わせることにより、XSCIDへのより安全な造血幹細胞移植療法を可能とする治療戦略を開発することが出来た。2)XSCIDの診断過程の中で、γc鎖に変異がないSCID患者の中から、別の原因遺伝子に変異を有する重症複合免疫不全症患者を発見した。IL-7受容体α鎖欠損症である。この疾患はT細胞が存在せず、B細胞は存在するが機能しない、XSCIDと極めて類似した免疫不全症であるが、NK細胞が存在することが異なる。3)Wiskott-Aldrich症候群へのレンチウイルスベクターによる遺伝子治療の予備実験を、イタリアのグループとの共同研究で施行し、試験管内での造血幹細胞への遺伝子導入法の有効性を確認した。 XSCIDに対する遺伝子治療は、世界の動向と歩調を合わせた形で、我が国での実施を引き続き検討して行く。XSCIDに対する遺伝子治療と造血幹細胞移植療法は異なった概念による新しい治療法であり、どちらの方法も科学的・倫理的観点から慎重に発展させていくことが重要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Itoh T et al.: "A simple controlled-rate freezing method without a rate-controlled programmed freezer provides optimal conditions for both large-scale and small-scale cryopreservation of umbilical cord blood cells"Transfusion. 43. 1303-1308 (2003)
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[Publications] Kobayashi N et al.: "Novel Artemis gene mutations of radiosensitive severe combined immunodeficiency in Japanese families"Hum Genet.. 112. 348-352 (2003)
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[Publications] Imashuku S et al.: "Multi-institutional collaborative study in Japan. Lack of clinical utility of minimal residual disease detection in allogeneic stem cell recipients with childhood acute lymphoblastic leukemia : multi-institutional collaborative study in Japan"Bone Marrow Transplant. 31. 1127-1135 (2003)
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[Publications] Kimura H et al.: "Prognostic factors for chronic active Epstein-Barr virus infection"J Infect Dis. 187. 527-533 (2003)
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[Publications] Kudo Y et al.: "The absolute number of peripheral blood CD34+ cells predicts a timing for apheresis and progenitor cell yield in patients with hematologic malignancies and solid tumors"Tohoku J Exp Med. 199. 111-118 (2003)
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[Publications] 土屋 滋: "レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療による白血病"BIO Clinica. 18. 80-85 (2003)