2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14370244
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
眞弓 光文 福井医科大学, 医学部, 教授 (70135581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 宏一 福井医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90207340)
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Keywords | レドックス制御 / 急性肺傷害 / 酸化ストレス / 一酸化窒素(NO) / ヒト肺微小血管内皮細胞 / 接着分子 / NOガス吸入療法 / gas biology |
Research Abstract |
培養ヒト肺微小血管内皮細胞を用いて以下の事項を明らかにした。(a)過剰のNOは内皮細胞の細胞外基質への接着をcGMP非依存性に抑制した。これは内皮細胞のα_vβ_3integrinがNOにより酸化修飾されるためと推定された。(b)tumor necrosis factor-αにより活性化された内皮細胞への白血球の接着は共存する過剰のNOまたは抗酸化剤(PDTCなど)により低下するが,それはICAM-1,VCAM-1などの接着分子の発現が抑制されるためであった。これらの薬剤は、転写因子NF-_KBの活性化を負に制御することで接着分子の誘導を抑えると考えられた。以上から,肺では過剰のNOは気道-血管関門の破綻を招くが,一方では,NOは白血球の接着,浸潤を抑制する働きを持つことが推定された。NOには肺の炎症を誘発する作用と抑制する作用が存在するが,その作用機構はレドックス制御に関連すると思われた。 肺血管は低酸素環境では収縮する特性を持つ。低酸素環境ではacidosisに傾くことが多いが,このような状態でのNOの血管作用を検討した。NOによるラット血管の弛緩反応がacidosis環境で増大することを認めた。作用機構としては,guanylate cyclase活性の増加またはNO_2^-→NO反応の推進が考えられた。 NOガス吸入療法は,肺高血圧あるいは換気血流不均衡の改善により血液酸素化を増加させることを目的とした肺血管選択性が著しく高い治療手段である。NOガス吸入療法を施行する際にその発生が憂慮されるNO_2は酸化損傷性が高い。よって,NO_2発生を最小限に抑えることが臨床上重要なテーマになる。気相におけるNOの酸化反応:2NO+O_2は3次反応であり,NO_2、の発生速度(-d[NO]/dt=+d[NO_2]/dt=2k[NO]^2[O_2])は速度定数kだけでなくNO濃度の2乗とO_2濃度に比例する。この微分方程式を解くと,t=1/(2k[O_2][NO]_0)xf/(1-f)となり,NOがある割合fだけNO_2に酸化されるまでに要する時間tは速度定数k,最初のNO濃度およびO_2濃度に逆比例することが理解できる。本申請者らは,過去80年間の研究報告からk値がk=1.2×10^3e^<530/T>(L^2mol^<-2>_s^<-1>)のArrheniusの式で表されることを導いた。室温ならばk=7.0×10^3L^2mol^<-2>_s^<-1>と計算される。加えて,本申請者らはNOガスが高圧で保存された場合に見られるNO_2とN_2O(笑気)への反応:3NO=NO_2+N_2Oのchemical kineticsを導き,米国NHLBI workshop(1993)での合意事項の1つ("吸入用NOは低圧で保存しなければならない")の理論的根拠を世界ではじめて提出した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hattori K, et al.: "Augmentation of NO-mediated vasodilation in metabolic acidosis"Life Sci. 71(12). 1439-1447 (2002)
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[Publications] Zou C, et al.: "Methylenetetrahydrofolate reductase polymorphism in childhood focal segmental glomerulosclerosis"Nephron. 92(2). 449-451 (2002)
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[Publications] Tsukahara H, et al.: "Oxidant and antioxidant activities in childhood meningitis"Life Sci. 71(23). 2797-2806 (2002)
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[Publications] Tsukahara H, et al.: "Gas-phase oxidation and disproportionation of nitric oxide"Methods Enzymol. 359. 168-179 (2002)
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[Publications] 塚原宏一: "髄膜炎,脳炎・脳症-発症のメカニズムを探る:髄膜炎の発症と一酸化窒素(NO)"小児感染免疫. 14(1). 31-39 (2002)
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[Publications] 塚原宏一: "一酸化窒素(NO)によるヒト肺微小血管内皮細胞接着の制御"呼吸. 21(Suppl 2 Pt 2). S62-S63 (2002)