2004 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚再生機構の解明-毛器官をモデルとした細胞内シグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
14370259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
板見 智 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30136791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 重樹 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30324750)
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Keywords | 再生 / 毛器官 / 男性ホルモン / TGF-β1 / stat3 / HGF / 創傷治癒 / 骨髄幹細胞 |
Research Abstract |
毛器官は生体で最も小さな組織の一つであるが、生涯にわたり毛周期と呼ばれる再生と退縮のプロセスを繰り返す生体唯一の組織でもある。毛器官は、主に外胚葉由来の上皮系毛包と中胚葉に由来する結合織性毛包により構成されており、これらの組織間相互作用により毛器官の発生と再生がなされる。ヒトの毛周期に影響を与える代表的な転写因子としては男性ホルモンレセプターが良く知られているが、我々は毛乳頭細胞と上皮系細胞である外毛根鞘細胞の共存培養による毛成長in vitroモデルを確立した。すなわち髭や男性型脱毛の前頭部毛乳頭細胞に男性ホルモンレセプターを強制発現させ角化細胞と共存培養すると、髭毛乳頭細胞を用いた場合には男性ホルモンは角化細胞の増殖を促進するが、男性型脱毛の前頭部毛乳頭細胞では逆に角化細胞の増殖を抑制した。さらにこの抑制作用は男性型脱毛の前頭部毛乳頭細胞が男性ホルモン依存性に分泌するTGF-β1によることを明らかにした。分泌されたTGF-β1はほとんどが活性型であり、男性ホルモンはTGF-β1遺伝子の活性化のみならずTGF-β1蛋白の活性化機構にも影響を与えることが明らかとなった。これらの結果は長い間不明であった男性型脱毛の発症メカニズムを明らかにすると共にその治療に新しい戦略を提供しうると考えられる。また以前より我々は創傷治癒と毛器官再生に遅延を来すstat3欠損マウスについてそのメカニズムを明らかにしてきたが、stat3を活性化する増殖因子であるHGFが糖尿病モデルマウスの創傷治癒を促進することを明らかにし、臨床応用が期待できる。 一方、我々は毛器官の再生に間葉系細胞が中心的役割を果たすことにヒントを得て、毛器官を欠く掌蹠皮膚の再生にも上皮系のみならず間葉系細胞が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。今回骨髄幹細胞が創傷肉芽組織の筋線維芽細胞に分化し、創傷治癒促進と掌蹠型表皮を誘導することを明らかにした。今後難治性皮膚潰瘍への骨髄幹細胞の応用が期待できる。
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Research Products
(6 results)