2005 Fiscal Year Annual Research Report
非定型抗精神病薬が初発精神分裂病の脳形態に与える影響
Project/Area Number |
14370294
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
平安 良雄 横浜市立大学, 医学研究科精神医学, 教授 (70244324)
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Keywords | 統合失調症 / MRI / 上側頭回 / ロールシャッハテスト / 認知障害 |
Research Abstract |
横浜市立大学附属病院を受診し、書面による同意が得られた、統合失調症34例を対象とした。診断はDSM-IVに基づき、構造化面接によって決定した。画像は当病院放射線部において、1.5TのMRIを用い1.0x1.0x1.5mmの解像度でT1強調画像、および1.0x1.0x3.0mmの解像度によるT2強調画像を記録した。画像はハーバード大学製作のソフト(3D-Slicer)によって解析した。対象脳部位として、左右上側頭回および左右海馬・扁桃核の容積を計測した。また、相対値を求めるための頭蓋内容積をT2強調画像から計測した。精神病像を持たない精神疾患の対照として、パニック障害の患者20例から同様のMRI画像の記録を行った。健常対照者として、これまで2例の記録を終了している。 認知機能などの評価を目的とした、心理学的検査として、Wechsler Adult Intelligence Scale - Revised(WAIS-R)、Wechsler Memory Scale (WMS)のほか、ロールシャッハテストを実施した。ロールシャッハテストはエクスナー法によって評価し、数値定量化を行った。その中から特に認知機能を反映する評価尺度を抽出した。社会背景として、年齢、発症年齢のほか本人および両親の社会・経済・教育背景を調査した。精神症状は陽性陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale, PANSS)を用いた。 現在までに統合失調症20例、パニック障害10例の左右上側頭回の定量解析、および前例の頭蓋内容積の定量を終了した。予備的な結果であるが、分散分析において、統合失調症とパニック障害の間に、疾患と左右において交互作用を認め、下位検定の結果、統合失調症の左後部上側頭回灰白質が減少していることが示唆された。この結果は、これまでのMRIによる統合失調症を対象とした先行研究と一致したものであった。さらに、ロールシャッハテストによって得られた認知機能尺度と左上側頭回後部灰白質容積との間に有意な正の相関が認められた。これらの結果は、統合失調症において、左側上側頭回と認知機能障害の関係を示唆するものである。本研究の要旨は、平成17年にスペインで開催された国際ロールシャッハ学会で発表した。また、平成18年5月の日本精神神経学会で発表予定である。
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