Research Abstract |
【背景】免疫抑制作用を持つ物質の遺伝子を臓器に発現させることで,臓器移植後の拒絶反応を抑制できる可能性がある.IL-10遺伝子をラット移植肺に導入することで,移植肺の拒絶反応が抑制できるか否かについて検討した.【方法】まず,アデノウイルスヴェクターを用いて,β-galactosidase遺伝子(adv-β-gal)の経気道的導入を行い,肺胞上皮細胞への導入を染色で確認した.次いで,ラット肺移植モデルを用い,IL-10遺伝子(adv-vIL-10)の経気道的導入が,移植肺拒絶反応を抑制するか否かについて検討した.BNラットをドナー,Lewラットをレシピエントとして同所性肺移植を行った.移植3日前に,ドナー肺に3×10^8pfu/0.3mLのadv-vIL-10またはadv-β-gal(コントロール)を経気道的に注入した.移植後6日目に移植肺を摘出し,拒絶反応の程度のグレーディング(1〜4)を行った.また,移肺の炎症所見のパラメーター(浮腫,血管炎,肺胞内出血,壊死)につき,スコアリング(0〜4)を行った.【結果】拒絶反応の程度は,adv-vIL-10群で3.75±0.5,adv-β-gal群で4.0±0で,両群間に統計学的な有意差を認めなかった.炎症所見のパラメーターのスコアにも,両群間に有意差を認めなかった(浮腫:3.5±0.6vs.4±0,血管炎:1.5±0.6vs.1.5±0.6,肺胞内出血:2.3±1.0vs.2.5±0.6,壊死:1.5±0.5vs.1.75±1.3.【考察・結論】移植肺への遺伝子導入は,拒絶反応を軽減する傾向にあったが統計学的有意差に至らなかった.アデノウイルスヴェクターの抗原性が実験結果に影響している可能性があるためliposomeをベクターとした実験を進行中であり,liposomeを用いた移植肺への遺伝子導入に成功している.
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