2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14370415
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
野一色 泰晴 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60033263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江畑 尚幸 (株)新道繊維, 研究開発本部, 開発主任
森 有一 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 教授 (10288003)
小菅 宇之 横浜市立大学, 医学部附属病院, 助手 (10336555)
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Keywords | 人工血管 / 狂牛病 / コラーゲン / 細胞成長因子 / 超極細ポリエステル繊維 / 被覆人工血管 |
Research Abstract |
臨床で使用されている布製人工血管では、繊維間隙からの漏血防止のために牛由来のコラーゲンやゼラチンが使用されているが、BSEが全世界的な広がりを見せている今日、それらに代わる被覆物質の開発が急務となってきた。本研究ではこのような背景を元に被覆物の開発を行うと共に、被覆される人工血管をも改良することで効率よく「病原性蛋白が含まれない被覆型人工血管」を開発するために基礎的資料を得る事を研究目的とした。 被覆物質の研究では、生体内で分解吸収される物質の選択基準として、1.生体内で異物反応がないこと、2.遺伝毒性のないこと、3.病原性蛋白が含まれないこと、4.生体内で3週間以内に分解吸収されること、5.細胞親和性があること、6.細胞毒性のないこと、7.抗原性のないこと、8.滅菌可能であること、9.長期保存によっても変質しないこと、10.細胞成長因子の吸着と徐放出が可能なこと、等を明らかにした。その基準に従って、ヒアルロンサン、ポリエチレングリコール、ポリビニールアルコール、カルボオキシメチルセルロース(CMC)などを候補として見いだした。 次にそれらをどの様にして人工血管に均質に塗布するか、塗布後にいかにして不溶化するか、生体内での分解吸収のコントロールをいかに微調整するか、という課題に取り組んだ結果、それらの物質の溶液もしくは懸濁液を作り、それを人工血管に塗布し、凍結乾燥と自然乾燥を組み合わせ、さらに真空下で加熱して熱架橋する方法を開発した。この時に、材料のpHと加熱温度、時間の調整によって、生体内での物質の吸収速度を調節する事が可能であることを明らかにし、実際に動物の体内に植え込むことによって、その効果を確認した。 次に、被覆されるべき布製の人工血管にも改良する検討を行った。その結果、最小量の被覆物質で人工血管を効率よく被覆させるため、物質を捕捉させやすい構造を繊維に持たせることを見いだした。具体的には、通常の太さの繊維の間隙に極めて細い繊維を混在させることで、被覆物質が少量であっても剥がれなくする事に成功した。これは、丁度、壁土を塗る際に泥の中に藁を切って混在させるとしっかりした塗布が可能となる現象に似ている。我々はこの手法を用いて、現時点では世界に類を見ない優れた被覆型人工血管の開発を行うための基礎資料を得ることができた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 野一色泰晴: "ハイグリッド型人工血管の作成"分子心血管病. 5(1). 47-57 (2004)
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[Publications] 野一色泰晴: "人工血管の設計と問題点"人工臓器. 32(1). 68-70 (2003)
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[Publications] Yukio Ichikawa, et al.: "Flow Dynamics in Internal Thoracic Artery Grafts 10 Years After Coronary Artery Bypass Grafting"Ann Thorac Surg. 73. 131-137 (2002)
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[Publications] 野一色泰晴: "人工血管の骨髄細胞による内皮化"Heart View. 6(10). 1494-1499 (2002)
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[Publications] 野一色泰晴: "骨髄細胞を用いた人工血管"血管医学. 3(4). 397-404 (2002)