2002 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症における至適ヘモグロビン値と腸管壁防御機構-ストレス応答酵素の役割
Project/Area Number |
14370495
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森崎 浩 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60182226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末松 誠 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00206385)
森田 慶久 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10276983)
小竹 良文 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70195733)
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Keywords | 敗血症 / 輸血 / 腸管壁防御機構 / ヘモグロビン / 内毒素血症 |
Research Abstract |
本研究では「輸血によるヘム負荷はストレス応答酵素ヘムオキシゲナーゼー1(heme oxygenase-1: HO-1)が誘導されるような侵襲下においては過負荷となり、生体防御機構のバランスを崩す」という仮説を基に、平成14年度は3年計画の初年度として「主にモデルの碇立と腸管透過性の変化を捉える」ことに集中した。まず当研究室でラット濃厚赤血球あるいは血漿成分のisovolemic transfusionあるいはhemodilutionによる高ならびに低ヘモグロビンラットを清潔操作下に作成し、その方法を確立した。おのおののヘモグロビン値は各々7-9g/dl、13-16g/dlの範囲として、1999年の多施設共同研究の計画(NEJM 1999;340:409)と合致するものとした。さらに臓器血流を再分配する因子である低血圧を伴わない内毒素血症ラットモデルを作成した。交換輸血ならびに内毒素持続投与開始16時間後に開腹し腸管壁透過性を蛍光色素FITCラベルデキストラン法により測定した。その結果、コントロールラットに比べ内毒素血症ラットの腸管壁透過性は有意に亢進していた。さらに、高ヘマトクリット群では内毒素惹起性の腸管壁透過性亢進を増強していることを見出した(2003年5月米国胸部疾患学会、シアトルで発表予定)。これは、敗血症において輸血によりヘモグロビン値を高めに維持すると腸管壁防御機構を崩して透過性を亢進する、また腸管内腔からのbacterial translocationを防止する点で敗血症ではヘモグロビン値を高く維持しない方がよいことを示した。この結果は本研究の仮説の一部を支持するもので、現在はヘミン投与により予めHO-1を誘導したラットにおいて輸血あるいは血液希釈の影響が腸管壁機能的統合性に影響するか検討すると共に、腸管壁内pH、門脈血流量の変化を併せて検討している。
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