Research Abstract |
生体親和性に優れるチタンおよびチタン合金は,金属床材料としても有望なものと考えられるが,これらは酸化しやすく,精密鋳造に不適な材料でもある.そこで,現在,金属床義歯作製において主流である鋳造法に代わる方法として,粉末冶金法を導入した場合,融点以下の温度で焼結するため、鋳造が容易でない金属材料の応用が可能であり,鋳造欠陥等のトラブルが少ないなどの利点が考えられる.しかし金属粉末の粒度分布,成形方法,さらには焼結時の収縮をどのように軽減させ寸法精度に優れた補綴物を得るかなど,数多くの問題が未解決である.本研究では,チタン焼結体の理工学的性質の向上を目的とした基礎的研究を行った. まず,混練条件の検討として,球形Ti粉末に6〜15wt%の添加剤を混合し,ドクターブレード法にてTiシートを作製した.6〜9wt%添加剤含有Tiシートでは,ひび割れやシート成形後の加工が難しく,一方,12〜15wt%添加剤含有Tiシートでは,シートへの気泡の混入が多々確認された.以上より,Tiシートの加工性および粉末の緻密化の点で,10wt%添加剤含有Tiシートが最も有用であると考えられた. 次に,10wt%添加剤含有Tiシートを用い,焼結温度および焼結時間について検討を行った.焼結温度に関しては,900℃〜1050℃において硬さ,引張および曲げ強度の増加が著しいが,同時に収縮率も増加するため,焼結体の使用用途に応じた焼結温度の設定が必要であると考えられた.焼結時間に関しては,10mm厚のグリーン体に比較し,1mm厚Tiシートを用い,グリーン体を薄く作製することにより添加剤の焼却がスムーズに行われ,短時間の焼結が可能となった. 以上のことから,粉末冶金法を導入した金属床義歯作製に関しては,10wt%添加剤含有Tiシートを用い,1000〜1050℃1hの焼結サイクルが適しているものと判断される.
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