2003 Fiscal Year Annual Research Report
唾液腺組織構築のシグナル伝達機構と唾液腺腫瘍の遺伝子治療
Project/Area Number |
14370669
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Research Institution | OSAKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大倉 正也 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (10281130)
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Keywords | 唾液腺 / 唾液腺腫瘍 / 遺伝子治療 / 細胞外マトリックス / ラミニン / 分化 |
Research Abstract |
唾液腺細胞HSGを細胞外マトリックスの一つであるラミニンゲルで培養すると腺房細胞に分化した.プラスチックシャーレにラミニンをコートしても分化は誘導されず,3Dの培養条件が必要であった.他の細胞外マトリックスのフィブロネクチンやコラゲンではいくら3D培養しても分化は誘導されず,ラミニン1のみで腺房細胞分化が誘導された.ラミニンゲル上でHSG細胞は遊走し,8-10個の球形のコロニーを形成し,細胞間は強固に接着し,核が基底側に偏芯を引き起こす.ラミニンとインテグリンの結合が腺房細胞分化に必要であり,インテグリンはα4β1あるいはα6β1を介していた.その下流で分化にc-Srcの活性が必要であり,dominant negative発現細胞のHSG-K297M細胞ではルーズの細胞間接着を持つコロニーが形成されるものの分化誘導が起こらなかった.2D培養でもインテグリンからのシグナルは伝達されるため,Srcはインテグリン以外の細胞間tight junctionの形成にも関与すると考えられ,この形成が腺房細胞分化に必要なもう一つのシグナルと考えられた.細胞間tight junctionのdesmoplakin1/2,ZO-1,E-cadherinの発現は,変化がなく,他の分子が関与していると考えられた.唾液腺腫瘍の1つである粘表皮癌の細胞株(TAK細胞)を樹立に成功した.この細胞はcytokeratinは発現しないものの,vimentinとα-SMAの細胞骨格を有し,PAS陽性であった.唾液腺腺癌細胞だけでなく,粘表皮癌細胞(TAK),さらに腺様嚢胞癌ACC細胞などすべての唾液腺腫瘍細胞はラミニンで,2D培養では増殖するが,3D培養ではほとんど増殖が見られず,アポトーシスや導管管腔側細胞への分化誘導が認められた.これらの結果は,ラミニンゲルによる唾液腺腫瘍の分化誘導療法への可能性を示唆した.
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