Research Abstract |
本研究では,現在に近い過去の自然状態において河川中・上流域ではどれだけの土砂が削剥・生産され,河川下流域にはどれだけの量の土砂が運搬され,堆積しつつあるのかを求め,自然のメカニズムによる土砂の生産・移動・堆積量を把握することを目的としている。同時に,完新世における山間地から海浜地帯に至る土砂移動の時期的な変化についての情報も併せて蓄積しようとするものである。 本年度は,沖積低地への土砂供給の具体的な事例として,低地上に残された複数の自然堤防-旧河道地形の分布と形成年代を仙台平野北部地区・中部地区・南部地区について精査した。その結果,完新世において少なくとも2つの時期(2,400〜2,500yrBPと1,600〜1,500yrBP)の河川氾濫期が存在したことを見いだした。 また,これらの現象に伴う低地への土砂散布量の事例として,仙台平野南部地区の阿武隈川下流部において,約1,600yrBP前後に形成された自然堤防を構成する土砂量は約5.2×10^6m^3,約2,600yrBP前後に形成された自然堤防を構成する土砂量は約3.7×10^6m^3,同じく3,300yrBP前後に形成された自然堤防を構成する土砂量は約3.0×10^6m^3と算定された。仙台平野の海岸侵食と土砂供給状況等をもとに推定される仙台平野への土砂堆積量は,沿岸漂砂による供給も含めて完新世後期の5,000年間の平均で年間1〜2×10^6m^3程度と算定されていることと比較して,沖積低地を構成する堆積層のうち,河成堆積物の貢献度を算定する基礎的数値を得た。 なお,それらの成果は,地球惑星科学合同大会(2004年5月),東北地理学会春季学術大会(2004年5月,3件)および目本地理学会秋季学術大会(2004年9月),同春季学術大会(2005年3月)において発表した。
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