Research Abstract |
計算機処理や通信の対象として,実世界の3次元空間情報や画像情報などが,比較的容易に利用できるようになってきた.たとえば,レーザスキャナによるレンジデータやCTなどによるボリュームデータ,デジタルカメラやデジタルビデオなどによる画像・映像情報など,実世界のデータが急速に増加している.一般に実世界の形状・画像情報はデータ量が多く,計算機処理の負荷が大きいばかりでなく,ネットワーク上の通信にも適していない.そこで,データ量を落とすために,実世界データを解析して必要とされる特徴量を適切に抽出する方法や,抽出された特徴量にもとづいて元のデータを復元したり補間したりする手法が必要となる.本研究では次元間の横断処理という概念をもとに,実世界データを効率よく処理する手法を考察した,平成16年度は,空間情報の解析ならびに画像の輝度・色情報の解析と利用に関して研究を進めた. 空間情報の解析手法としては,スカラ場の位相変化を表現するボリューム位相骨格を構成し,これを可視化の伝達関数設計に利用することを考えた.スカラ場における臨界点は,その近傍において等値面の位相が変化する点となる.そこで,節点が臨界点,リンクが等値面(の位相)に対応するグラフによって,スカラ値に伴う等値面の位相的な変化を表現する方法を提案し,これをボリューム位相骨格と名付けた.まず,このボリューム位相骨格を安定的に計算する手法を開発した.さらに,当該スカラ場を適切にボリューム視覚化するために,得られたボリューム位相骨格を利用して伝達関数を決定する方法を検討し,実験によって有効性を示すことに成功した. 画像の輝度・色情報の解析と利用については,実写画像を対象とした視覚復号型暗号に関して研究をまとめた.視覚復号型暗号とは,復号にあたって計算を必要とせず,人間の視覚によってのみ復号可能な暗号である.具体的には,砂の嵐状のランダムな画像2枚を,それぞれ透明なシートに印刷して,重ね合わせると文字が浮かびあって見える視覚復号型秘密分散などが知られている.従来は文字のような2値画像を暗号化する研究が殆んどであったが,本研究では実写画像を対象とすることを目指した.グレースケールの実写画像では,ダイナミックレンジの拡大と階調数の増加によって,高品質な画像の暗号化に成功した.また,カラー画像の場合には,CIE-XYZ色空間を利用した色の中立化操作によって,画像を隠す方法を開発した.
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