2003 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子消滅法を利用した生体高分子ゲルのナノ空間構造解析
Project/Area Number |
14380235
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西嶋 茂宏 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00156069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 精一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80011203)
誉田 義英 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (40209333)
泉 佳伸 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60252582)
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Keywords | ゲル化 / 生体軟組織 / 吸収線量 / ゼラチン / ナノ空間構造 / 陽電子消滅法 / 網目構造 / 陽電子寿命 |
Research Abstract |
生体内では、蛋白質の凝集、ゲル化を通して生体軟組織あるいは硬組織の構築が行なわれ、それにより組織の成長や修復、場合によっては老化の進行が起こる。このゲル化のプロセスを評価することによって皮膚や軟骨など生命組織体の構築過程におけるメゾスコピックな構造変化と機能の獲得の関係をナノ空間構造の観点から明らかにすることができる。蛋白質の凝集、ゲル化を人工的に再現するために、生体組織が集合していく過程を明確にし、それを人工的に模倣する手法を確立する一環として、量子線プロセシングを生体高分子に適用した。ゲルの濃度、吸収線量を変化させたときのゲルの物性変化を調べることによりゲル化過程を調査した。 まず、構造蛋白質のコラーゲンのモデル化合物としてゼラチンを用い、水中で十分膨潤させた後加温することによって完全に溶解させ冷却し、ガンマ線照射を行なうことによりゼラチンゲルを作成した。このように作成したゼラチンゲルは粘弾性などの力学的性質、ゾルーゲル転移温度などのマクロ物性の測定をしたところ、濃度、吸収線量の変化とともにマクロ物性が変化することがわかった。このことより濃度、吸収線量を制御することでゲルのマクロ物性を制御することが可能であるということを明らかにした。 次に濃度、吸収線量が変化したときのゼラチンゲルのナノ空間構造を解析するために陽電子消滅法を用いることにした。陽電子消滅法とは陽電子が電子と消滅する際に、その質量エネルギー分のガンマ線を放出する事を利用して行う手法であるが今まではゲルのような軟組織を持つ物質の測定はあまり行なわれていなかった。そこでゲルの構造を知るのに有効であるかを確認するためにまずゼラチン水溶液ゲルの陽電子寿命を測定した。この結果ゲルにおいて陽電子消滅法の測定は可能であることが確認できた。濃度が30wt%と40wt%の2つのτ3の値にはほとんど違いは見られなかった。τ3はゼラチンゲルの網目構造の網目の大きさを示すものだが、今回違いが見られなかったのは網目中の水中で陽電子が消滅したものと考えられる。今後は構造を変化させずに水の影響を無視するために凍結乾燥を行なったゼラチンゲルの陽電子寿命測定を行なう。
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Research Products
(1 results)