2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14380256
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大津留 晶 長崎大学, 医学部, 助手 (00233198)
難波 裕幸 長崎大学, 医学部, 助教授 (80237635)
山下 俊一 長崎大学, 医学部, 教授 (30200679)
高村 昇 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (30295068)
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Keywords | 放射線 / 甲状腺がん / ミトコンドリアDNA / 発がん機構 |
Research Abstract |
放射線誘発甲状腺がんの核印遺伝子を解明する目的で、全塩基配列が詳細に解析されているミトコンドリア(mt)DNAを標的に、放射線核印遺伝子としてのmtDNAの意義を検討した。チェルノブイリ原発事故後に増加した現地甲状腺腫瘍組織を用いて、放射線被ばくとmtDNA異常との関係について、正常甲状腺組織部分と癌病変部分で染色体DNA量を基準として相対的なmtDNA量の検討を行い、さらにcommon deletion(CD)やlarge scale deletion(LSD)と放射線被ばくとの関係を検討した。長崎大学倫理規定に準じ提供を受けたロシア連邦オブニンスク医学放射線研究所附属病院の手術摘出された乳頭癌11症例、濾胞腺腫6症例の切除凍結標本と、コントロールとして日本の乳頭癌9症例の凍結切片よりDNAの抽出し、各種実験を行った。その結果、(1)放射線誘発乳頭癌と濾胞腺腫、特に誘因がなく発症した乳頭癌症例のいずれの病変部においても正常ペア組織に比べmtDNA量は増加しており、その増加率は放射線誘発例において顕著であった。(2)CDの量は病変部分において増加していたが、特に誘因がなく発症した癌より、放射線誘発例でCDの量が多い傾向にあった。ロシアの症例においてはCDの量と居住地区の放射性ヨードの汚染量との相関は認められなかった。すべての症例でmtDNA量とCDの量の相関は認められなかった。(3)いずれの甲状腺組織においても、微量だが様々な長さのLSDが存在することが判明した。ロシアの症例においては居住地区での放射性ヨードの土壌汚染程度は、LSDの頻度とは相関したが、CDの量と相関関係が見られなかった。(4)甲状腺培養細胞において線量依存的にLSDの有意な増加が認められた。 以上の結果から、甲状腺正常組織も病変部分もCDが常に存在することが判明し、微量なHeteroplastyの存在が示唆された。MtDNAの種々の遺伝子異常の存在や発症機構については疾患単位で解明されつつあり、各種ストレス因子にるmtDNA異常発生が一部証明されている。これら点突然変異やCDはミトコンドリアの複製時に多く発生するが、LSDの発生機序は従来不明であった。今回の解析結果からは、放射線内部被ばくによりmtDNAのLSD発生が強く示唆され、mtDNAを指標とした甲状腺がんの発症分子解析の解明が必要である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.I.Rogounovitch, et al.: "Large deletions in mitochondrial DNA in radiation associated human thyroid Tumors"Cancer Res. 62. 7031-7041 (2002)
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[Publications] M.Ito, et al.: "Expression of receptor tyrosine kinase axl and its ligand gas6 in pediatric thyroid carcinomas around Cheronobyl"Thyroid. 12巻・11号. 969-973 (2002)
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[Publications] R.Imanishi, et al.: "A histone deacetylase inhibitor enhances killing of undifferentiated thyroid carcinoma cells by p53 gene therapy"J Clin Endocrinol Metab. 87巻・10号. 4821-4824 (2002)
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[Publications] K.Ishigaki, et al.: "Aberrant Localization of beta-Catenin correlates with overexpression of its target gene in human papillary thyroid cancer"J Clin Endocrinol Metab. 87巻・7号. 3433-3440 (2002)
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[Publications] K.Sugiyama, et al.: "Aurora-B associated protein phosphatases as negative regulators of kinase activation"Oncogene. 21. 3103-3111 (2002)
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[Publications] V.A.Saenko, et al.: "Problem of prevalence of ret/PTC rearrangements in thyroid tumors"Thyroid. 12巻・5号. 435-436 (2002)
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[Publications] S.Yamashita, et al.: "Radiation and Homeostasis"Molecular epidemiology of childhood thyroid cancer around Chernobyl. 556 (2001)