2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14380258
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
神田 啓史 国立極地研究所, 資料系, 教授 (70099935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 修司 島根大学, 教育学部, 助教授 (50185295)
工藤 栄 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 助教授 (40221931)
伊村 智 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (90221788)
瀬戸 浩二 島根大学, 総合理工学部, 助手 (60252897)
井上 源喜(松本 源喜) 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (80245357)
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Keywords | 湖沼 / 南極 / 蘚類 / コケ坊主 / 栄養 / 繁殖体 / 淡水 / 塩分 |
Research Abstract |
本年度は主に、南極湖沼の底に見出された典型的なコケ坊主(Moss Pillar)の構造について集中的に解析された。昭和基地周辺スカルブスネスのB4池から採取された資料に基づき、そのサイズ、年齢、シュート密度、乾燥重量、炭素量、窒素量、クロロフィル量などが計測された。コケ坊主は主に蘚類ナシゴケ(Leptobryum pyriforme)のシュートで成り立っていた。コケ坊主の上部はこのコケの緑色部で占められ、コケ坊主の下部は本種の無性繁殖体、いわゆる仮根帯に付着したチューバーで覆われていた。コケ坊主の内部はほとんど空洞になっており、著しく分解が進んでいるものと思われた。コケ坊主の内部の乾燥重量、炭素量、窒素量、クロロフィル量は全体で一様ではなく、上部で高い傾向にあった。このことはコケ坊主の上部で著しく成長が進んでいることを物語っていた。コケ坊主の年齢は上から20cm下部で250年を経過していることが理解できた。このようにB4池の水生コケの存在は検出が不可能なぐらい貧栄養な南極の湖沼において、驚くべき成長量があることを示している。 一方、昭和基地周辺の宗谷海岸の73の湖沼について調査した結果、いずれの湖沼においても2種の蘚類が生育していることが確認できた。淡水池の38池でオオハリガネゴケ(Bryum pseudotriquetrum)が確認され、26池でナシゴケが確認された。ナシゴケの生育は完全な淡水池ではなくて、やや塩分を含む湖水においても見出だされた。 ナシゴケはこれまでに、南極半島、クイーンモードランドに確認されているが、とくに昭和基地周辺における分布はスカルブスネスを中心にやや広がりつつある。本種の南極における分布の中心はどこにあるのか、それらがどのように分布を拡大してきたのかを南極域全体で調査検討する必要があろう。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 伊村智: "蘚類コバノチョウチンゴケの繁殖動態"蘚苔類研究. 8・7. 214-217 (2003)
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[Publications] S.Imura, T.Bando, K.Seto, S.Ohtani, S.Kudoh, H.Kanda: "Distribution of aquatic mosses in the Soya Coast region, East Antarctica"Polar Bioscience. 16. 1-10 (2003)
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[Publications] S.Kudoh, Y.Tsuchiya, E.Ayukawa, S.Imura, H.Kanda: "Ecological studies on aquatic moss pillars in Antarctic lakes. 1. Macro structure and carbon, nitrogen and Chlorophyll a contents"Polar Bioscience. 16. 11-22 (2003)
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[Publications] 井上源喜, 榎本綾香, 小森一史, 竹村哲雄, 大山佳邦, 伊村智, 神田啓史: "湖底堆積物中の有機成分による南極の昭和オアシスにおける古環境変動に関する予備的研究"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 61 (2003)
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[Publications] 志賀紀人, 河原秀久, 伊村智, 神田啓史, 中蔦裕之, 山本好和, 小幡斉: "南極地衣類由来の氷結晶制御物質"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 63 (2003)
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[Publications] 小川麻里, 渡辺史子, 増沢武弘, 伊村智, 神田啓史, 長沼毅: "南極テラノバベイ基地周辺におけるコケ植生の脂肪酸組成"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 64 (2003)
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[Publications] 鮎川恵理, 伊村智, 神田啓史: "南極におけるオオハリガネゴケ群落およびヤノウエノアカゴケ群落の遺伝的構造"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 65 (2003)
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[Publications] 大谷修司, 巣山弘介, 石塚健博, 小島亜矢子: "昭和基地周辺における土壌藻類Chlorella vulgarisの分布について"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 67 (2003)
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[Publications] 鬼頭研二, 大山佳邦, 神田啓史: "キングジョージ島の汚水で汚染された砂浜の間隙動物について"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 68 (2003)
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[Publications] 高橋哲也, 岡村佳織, 西山美幸, 大谷修司: "紫外線防御材を添加した合成高分子の紫外線遮蔽効果と力学物性"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 69 (2003)
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[Publications] 星野保: "Typhula属雪腐病菌の生理・生態"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 19 (2003)
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[Publications] 長島秀行, 藤島大輔, 井上源喜: "南極の岩石内微生物群より分離した単細胞藻類の凍結による損傷と回復"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 21 (2003)
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[Publications] 長沼毅, 岡本拓士, 伊村智, 伴修平: "南極すりばち池における広塩微生物の深度分布について"第26回極域生物シンポジウム講演要旨集. 22 (2003)