2004 Fiscal Year Annual Research Report
テロメラーゼ遺伝子導入不死化ヒト細胞の低線量放射線への応答反応の分子機構
Project/Area Number |
14380260
|
Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
石崎 寛治 愛知県がんセンター(研究所), 中央実験部, 部長 (70111987)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
組本 博司 愛知県がんセンター(研究所), 中央実験部, 研究員 (00291170)
|
Keywords | 低線量率放射線 / 不死化ヒト細胞株 / ATM蛋白 / リン酸化 / シグナル伝達系 / p53蛋白 / γH2AX |
Research Abstract |
我々の樹立した抗リン酸化抗体を用いた前年度の予備研究で得られたATM蛋白のリン酸化による活性化の解析結果について、今年度は本格的に繰り返し実験を行なった。なお、本実験ではhTERT遺伝子導入による不死化正常人由来細胞をG1/G0期に同調し、全ての放射線照射を行った。高線量率放射線被曝後の細胞では0.2Gy程度の非常に低い線量からATM蛋白のリン酸化を示す細胞が観察され始め、0.6Gy程度で全ての細胞においてATM蛋白のリン酸化が見られ、それ以上の線量ではこの状態が維持された。このことはこれまで報告されているATM蛋白は非常に少ないDNA2重鎖切断によっても活性化されるという結果と合致している。一方、低線量率放射線被曝後の細胞では0.5Gy程度から少数の細胞でATM蛋白のリン酸化は観察されるが、1Gyを超える線量でもATM蛋白のリン酸化を示す細胞は全体のわずか20%程度であり、その割合はより高い線量を被曝した後でも増加しなかった。これらの結果とこれまで明らかにした低線量率放射線では被曝線量が高くなってもp53遺伝子の活性化がほとんど見られない点、またDNA2重鎖切断の指標であるγH2AXのフォーカスもほとんど観察されない点を考察すると以下のように推測される。低線量率放射線により誘発されるDNA2重鎖切断は個々の時点での数は少なくATM蛋白の活性化も充分起こらないのでシグナル伝達系でその下流にあるp53蛋白の活性化もほとんど見られない。しかし、わずかながらもATM蛋白は有意に活性化されるのでそれがDNA2重鎖切断の修復能を上昇させ低線量率放射線によるDNA損傷の非常に効率良い修復となっている可能性が考えられる。
|