Research Abstract |
桑田と赤坂は,^<15>N標識ハムスタープリオン蛋白を用い,高圧NMRによる活性型立体構造を見出し,その構造を特徴付けることに成功した(Kuwata et al., Biochemistry,2002)。正常ハムスタープリオンは,生理的条件下で安定な天然構造を形成しているが,圧力を加えることにより,構造が破壊される。このプロセスを原子分解能で追跡することにより,グローバルなダイナミクスや熱安定性の差が明らかとなった。プリオン分子内部においてはB, Cヘリックスが相対的に不安定であり,さらにCヘリックスとS1/S2界面が特に壊れやすく,グローバルなダイナミクスや熱安定性の差が明らかとなった。 また,桑田と鎌足は,^<15>N標識ハムスタープリオン蛋白を用い,生理的条件下におけるマイクロ秒からミリ秒の揺らぎを原子レベルの分解能で計測を行った。その結果,ミリ秒以上の遅い揺らぎは,B, Cヘリックス上で観測されること,及び決まった構造を持たないN端部分との特異的な干渉作用が見られることが明らかとなった。これにより,このC端とN端の相互作用及び,そのつなぎ目(疎水性コア)のダイナミクスを記述するためのスペクトル密度関数の考察を行うことが可能となった。 さらに桑田は,マウスプリオン部分ペプチド(106-126)を合成し,電顕的にアミロイドを形成することを確認した。また,CD測定,保護因子測定を行い,このアミロイドの構造特性を明らかにした。 桑田は,本年度,超高速パルスラベル法を開発するための第一段階として,高圧測定が可能な分光光度計を導入し,高圧ジャンプ法による蛋白質の超高速現象の観測を開始した。一方,赤坂らは,高圧蛍光セルを導入し,蛋白質の圧力変性に伴う蛍光スペクトルの計測を開始し,再現性のあるデータが蓄積されつつある。
|