Research Abstract |
桑田らは,プリオンの疎水性クラスター領域における部分ペプチドが形成するオリゴマーの立体構造を,電子顕微鏡,円二色性スペクトル,NMR,計算機シミュレーションを用いて決定した(Kuwata et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2003)。この結果は治療薬の開発に役立つと考えられる。 さらに桑田,赤坂,鎌足らは,ハムスタープリオンにおいて,NMR緩和時間測定によるミリ秒の遅い揺らぎを示す部位と,高圧NMR測定による安定性の低い部位とがよく相関していることを発見した。このことは,プリオンの遅い揺らぎがフォールディング中間体PrP^*形成反応と関連していることを示す証拠であり,大変興味深い(Kuwata et al. Biochemistry,印刷中)。熱安定性の低い部位は,遺伝性ヤコブ病の原因となる変異とよく相関しており,このような蛋白質のグローバルな遅い揺らぎが,病的構造変換と関連していることが分かった。プリオンの疎水性クラスター部分は,細胞毒性に関与し,またC端のヘリックス内部で熱安定性の低い残基は,感染性に関与していると考えられる。 また赤坂らは,高圧NMRで観測されたユビキチンのフォールディング中間体が,パルスラベル法で調べられた速度論的中間体とよく似ていることを見出した(Kitahara et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2003)。また,高圧NMRを用い,高圧下における卵白リゾチームの立体構造を計算し,その構造変化を明らかにした(Refaee et al, J.Mol.Biol.,2003)。 このように,広い構造空間における蛋白質の姿が原子レベルの分解能で次々と実験的に明らかになって来ている状況にある。
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