2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14380356
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
古川 貴久 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 発生生物学部門, 研究部長 (50260609)
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Keywords | 中枢神経系 / 網膜 / 細胞運命 / 光受容体 / 遺伝子制御 |
Research Abstract |
網膜視細胞は錐体・桿体の2種類の細胞からなり、哺乳類において唯一の光センサーとして働く。網膜色素変性症や近年先進国で著しい増加を示している老人性黄斑変性症、糖尿病性網膜症等の疾患で網膜視細胞が傷害されると、著しい視力障害を来す。これらの疾患に対しては、その進行を遅らせる以外に根本的な治療法がないのが現状である。網膜視細胞は、その解剖学的および臨床的重要性から多くの研究がなされてきたが、発生メカニズムについてはまだ十分に解明されていなかった。また、松果体については、体内リズムとの関連について多くの研究がなされてきたが、その発生メカニズムは不明であった。 我々は以前より網膜視細胞の発生機構を明らかにすべく研究してきた。以前の研究において、我々は網膜視細胞と松果体に特異的に発現する転写因子Crxを単離し、いくつかの網膜変性疾患の原因遺伝子であることを明らかにした。その後、ノックアウトマウスの解析により、Crxが視細胞における光受容反応および松果体におけるメラトニン合成に必須であることを示した。しかしながら、Crxのホモ接合ノックアウトマウスにおいても視細胞の初期発生がみられることから、Crxと機能的に重複する遺伝子の存在が示唆されていた。そこで今回、Crxと同じOtxファミリーに属し、網膜における発現が報告されているOtx2に注目した。Otx2はショウジョウバエの遺伝子orthodenticleの哺乳類におけるホモログとしてクローニングされ、前脳、中脳、松果体、神経網膜、網膜色素上皮といった組織における発現が報告されている。我々は今回の研究において、視細胞が網膜幹細胞から分化する際の最初の鍵を握る遺伝子がOtx2であることを明らかにした。今後、網膜幹細胞や神経幹細胞にOtx2を導入することにより、視細胞への分化誘導が可能になることが期待される。
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