2005 Fiscal Year Annual Research Report
α-Synucleinの分子病態生理:神経変性疾患の分子機構
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14380363
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
上田 健治 (財)東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 主任研究員 (90261180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉井 光信 (財)東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 参事研究員 (60091047)
相澤 貴子 (財)東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 研究員 (40415542)
久永 真市 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (20181092)
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Keywords | NAC / NACP / Synuclein / Parkinson / Alzheimer / 神経変性 / ロテノン / 細胞毒性 |
Research Abstract |
優性遺伝性のParkinson病(PD)やLewy小体型認知症(DLB)家系の分子遺伝学的解析から、α-Synuclein(aSyn)の遺伝子変異がこれらの変性疾患原因遺伝子として同定されて以来、これまでに蓄積されて来た生物学的、病理学的な諸研究から明らかになった事は、aSynの何らかの異常が神経変性をもたらし、PDやDLBなどの変性疾患として現れる事である。この事実を鑑み、培養神経細胞内にaSynを過剰発現させ、aSyn異常状態の細胞モデル系として神経変性機構を検討した。aSyn異常によりドーパミン神経が特に変性し易い事実から、ヒト由来のドーパミン神経芽腫細胞株SH-SY5Yを用いた。ヒトaSynを発現するプラズミドを細胞に導入して安定形質転換細胞を得た後、次の諸法でaSynの発現を確認した。先ず、用いた発現法が緑色蛍光蛋白質との融合蛋白質である事から、蛍光観察で緑色蛍光が全細胞に観られ、aSynの発現が確認された。次に、抗aSyn抗体を用いた免疫細胞化学では、aSynが同様に細胞内に拡散した状態で検出された。他方、疫学研究で示唆されていた農薬とPDの関連は、最近実験研究もされるようになり、天然殺虫剤ロテノンはミトコンドリア酵素複合体Iを阻害する事、ラットに投与するとPD類似の症状が出ることが示された。しかしロテノンとaSyn異常との関連の詳細は不明である。そこで、今回aSynを発現させたSH-SY5Y細胞でロテノンの影響を検討した。ロテノン添加後MTTアッセイで細胞生存率を検出したところ、25nMの濃度から毒性が検出され、75nMでは約40%にまで生存率が減少し、100nMではさらに減少した。次に、aSynのmRNA発現をRT-PCRで検討したところ、aSyn導入細胞でmRNAが確認され対照細胞では検出されなかった。aSynの蛋白量をウエスタンブロットで検討したところ、aSyn導入細胞で検出され対照細胞では検出されなかった。細胞学的観察からは、100nMロテノン処理72時間後、aSyn導入細胞質内にエオシン陽性封入体としてaSynの凝集体が観察され、さらに顆粒小体、好酸性封入体も観察された。以上から、ヒトaSyn導入ヒト由来ドーパミン神経芽腫細胞株SH-SY5Yを確立し、疫学的にPDに関与すると知られている殺虫剤ロテノンの処理によりaSyn凝集体等の異常構造が確認された。
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