2004 Fiscal Year Annual Research Report
前頭連合野神経回路による多重情報表現とその処理機構の研究
Project/Area Number |
14380367
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船橋 新太郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (00145830)
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Keywords | 前頭連合野 / 情報処理機構 / 情報表現 / 遅延反応課題 / 単一ニューロン活動 |
Research Abstract |
思考、推論、判断、意思決定などには、様々なモダリティーの情報、同一モダリティーの異なる質情報を用いた処理を必要とする。限られた神経資源の中でこのような情報処理を素早くかつ適確に行うためには、同一神経回路網における多重情報表現が不可欠である。本研究では、マルチモーダルな情報処理に関わると同時に、思考や意思決定をはじめとする高次脳機能に深く関わる前頭連合野背外側部ニューロン群の活動を指標に、同一神経回路網において異なるモダリティー情報がどのように表現され、処理に供されるのかを解析しようと試みた。 空間性、非空間性情報のワーキングメモリをそれぞれ必要とする課題、ならびに報酬条件を操作したこれらの課題を用いて検討した。その結果、前頭連合野背外側部においては、空間情報、非空間情報を表現するニューロンの記録部位にはトポグララィーは観察されず、両者の分布に大きな重なりが見出されたが、分布の重心位置に違いのあることが見出された。また、視覚刺激が呈示される位置の違いや眼球運動方向の違いにより、視覚情報を表現するニューロンや眼球運動情報を表現するニューロンの空間的分布に違いが見出された。この結果は、さまざまな情報は前頭連合野のニューロン群の空間的な発火パターンの違いにより表現されていることを示唆している。さらに、前頭連合野背外側部と前頭眼窩部で報酬出現や報酬期待に関連するニューロン活動を解析した結果、報酬に関わるニューロン活動は感覚情報や運動情報を表現するニューロン活動に重ねあわされて生じること、両者の空間分布は異なること、また、このような空間分布は背外側部と眼窩部で異なることが明らかになった。このように、情報の違いにより発火するニューロン群の空間的なパターンが異なることから、情報処理とは発火するニューロン群の空間的なパターンの変化として捉えられることが示唆された。しかし、空間的な発火パターンの時間変化が情報処理に関わっていることが明らかになったものの、そのような変化を生じる要因は明らかではない。今後、このような変化を生じる要因としてのニューロン間、ニューロン群間の相互作用の解析が必要であることが痛感された。
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