2002 Fiscal Year Annual Research Report
初期視覚系における輸郭線の折れ曲がり、分岐の表現の神経メカニズムの研究
Project/Area Number |
14380371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
伊藤 南 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (20311194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 正 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (50311197)
小松 英彦 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00153669)
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Keywords | 大脳皮質視覚野 / 輪郭線 / 折れ曲がり / 分岐 / 霊長類 / V2野 |
Research Abstract |
本研究課題は物体の形状を認識する過程において図形の輪郭に含まれる折れ曲がりや接合パターンが初期視覚野でどのように検出されているのかを調べることを目的とし、課題前半部分では単一細胞記録中に刺激のパラメーターを操作して輪郭線の折れ曲がりに対する反応選択性を詳細に調べることを計画した。本年度は二頭のサルをあらかじめ注視課題で訓練し、課題遂行中に第二次視覚野のII/III層より細胞外記録を行った。2本の直線成分を組み合わせて刺激セットを作成した。第二次視覚野の神経細胞は受容野を横断しかつその中央部分で折れ曲がるような輪郭線刺激に対してもよく反応するものが多く、刺激セットのいずれかの刺激に反応するものを145細胞記録した。89細胞は受容野内に呈示した短線分よりも輪郭線刺激に対して強く反応した。126細胞(86.9%)は輪郭線の折れ曲がりに対して緩やかな反応選択性を示し、さらにある特定の折れ曲がりに対して選択的に反応する細胞も少数ながら存在した。94細胞(64.8%)では反応選択性が1〜2方向の直線成分に依存しており、各直線成分を単独で呈示して調べた方位選択性とよく合致した。組み合わせ刺激に対する平均の発火頻度と直線成分に対する平均の発火頻度の比は1.01であった。多くの場合、折れ曲がりに対する選択性は1〜2方向の直線成分に対する興奮性反応とある特定の方向の直線成分に対する抑制性反応との組み合わせにより説明することができた。抑制性作用は線成分の傾きだけではなく線成分が受容野のどちら側にあるかにも依存することから受容野周囲の不均一な抑制性入力によると考えられる。32細胞では折れ曲がりに対する選択性が特異的である一方、殆どの場合各直線成分に対する反応が弱かった。これらの結果は第二次視覚野が方位選択的な線情報の組み合わせにより輪郭線の折れ曲がりや分岐を検出する最初のステップであることを示唆する。
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[Publications] Tani T., Yokoi K., Ito M., Tanaka S., Komatsu H.: "Functional Organization of the Cat Visual Cortex in Relation to the Representation of a Uniform Surface"J. Neurophysiology. 89. 1112-1125 (2002)