2004 Fiscal Year Annual Research Report
擬同型知識構造モデルを用いた水害時における避難行動決定過程のシミュレーション
Project/Area Number |
14390021
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Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
坂野 達郎 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教授 (40196077)
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Keywords | 水害避難行動 / プロトコル実験 / 推意過程の推定 |
Research Abstract |
本研究は、住民が河川災害時にどのような行動を取るのか、その意思決定過程のプロトコルデータを収集し、プロトコルデータから状況の認識に用いた知識や推論の過程を事実推論ルールとして抽出し、状況認識から行動を決断する過程を行動ルールとして抽出し、抽出した推論ルールをもとにして、避難行動のシミュレーションを行うことを目的とする3ヵ年の継続研究の3年度目にあたるものである。平成16年度の実績は、以下の通りである。 まず、平成14年度に様相分離法で抽出した2270命題から、状況認識に関する889命題を抽出した。抽出にあたっては、日本語文法学者益岡(1987)による述語の類型にもとづき、平成15年度分析対象に置いた意思動詞が表現する行為命題と、主格1人称+形容動詞の組み合わせで構成される情意表出文を除外したものが、動態事象、静的事象、属性叙述に対応することから、これを状況記述命題とすることができることを確認した。さらに、状況記述命題は、(1)避難行為動詞に伴う格の意味内容から記述対象が、水害原因、非難場所、避難経路、水害情報および同伴者に分類でき、(2)現象が生起している時間により、過去の事実・経験、避難行動時間帯内で生じる現況及び予測、普遍的な属性・状態に分類でき、(3)述語句の特徴から事実記述的な命題と評価命題に分類できることがわかった。 最後に、平成15年度に抽出した行為命題と今年度抽出した状況記述命題を組み合わせて、避難行動をシミュレートした。避難行動には、性別、住宅、居住地の地理的状況、家族の状況などさまざまな要因が影響することがわかっているが、今回の実験では関係要因を厳密にコントロールしてデータが取得できていないため、個人個人の状況に応じたシミュレーションまではできなかったが、水害経験者、未経験者の行動の差異を再現することができるデータを得ることはできた。
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