2003 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後開発途上国における女性の健康問題の要因分析と改善の方策
Project/Area Number |
14390025
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
青山 温子 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40184056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 悦子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (40075130)
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Keywords | 地域紛争 / 開発途上国 / 女性の健康 / 復興開発 / 保健医療対策 / 精神的健康 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
Research Abstract |
本研究の目的は、開発途上国の地域紛争が与える女性の心身の健康への影響を、医学的側面及び社会的側面から分析し、効果的介入法を提案することである。第2年度は主にコンゴ民主共和国(DRC)を対象としたが、カンボディアについても引き続き検討した他、パレスチナや、紛争後ではないが度重なる制裁下にあり国際的に孤立しているミャンマーについても調査した。 DRCには退避・渡航延期勧告が出されていたため、研究代表者(青山)と研究分担者(喜多)は、ケニアのナイロビにて、現地共同研究者(Muyembe Temfum)らと打合せ会議をもち、同国内の情報等を収集した。また、ナイロビに拠点をおく国際機関やNGOから、DRC及び周辺紛争国に関する資料・情報を収集した。さらに、青山はケニア国内の難民キャンプ(カクマ・ダダブ)を実地調査した。 DRCの内戦は収束しつつあるが、東部等で武装集団が依然として活動している。紛争関連の女性の健康問題として特徴的なのは、年齢・部族等に関わりなく、女性に対する性的・身体的暴力が極めて多いうえ、その残虐性が大きいことである。暴力による女性の身体的・精神的健康被害の実態は十分把握されておらず、NGOによる小規模調査や国連機関の報告等からの分析を進めている。 喜多のミャンマー現地調査から、治安は一応確保されているものの、国境の少数民族居住地は隔離され「隠れた人道の危機」状態にあることが判明した。人々の移動や社会活動は著しく制約を受け、貧困が遷延し、基礎的保健医療サービスすら供給されず、人々は希望を失っていた。制裁下にある国が、紛争類似の状況にあることが確認された。 カンボディアでは、女性の健康に関わるNGO活動の状況と、男性の意識に関する定性的調査を行い、昨年の調査結果と合わせ分析中である。パレスチナについては、紛争再燃・境界壁建設等に起因する健康被害に関する情報・資料を収集した。
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[Publications] 青山温子, 喜多悦子, 宇野日出男, 宇井志緒利, Gilbert Burnham: "復興開発と保健医療-アフガニスタンの事例・第1報"国際開発学会第4回春季大会報告論文集. 187-192 (2003)
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[Publications] 宇井志緒利, Leng Kuoy, 宇野日出男, 青山温子: "紛争後復興開発期における参加型保健研修が果たす役割-カンボディアにおける取り組みから"第14回国際開発学会全国大会報告論文集. 549-555 (2003)
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[Publications] 青山温子: "健康、開発、そして平和"時局. 36・5. 26-27 (2003)
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[Publications] 喜多悦子: "地域武力紛争と緊急人道援助-人間の安全保障としての健康"アジア新秩序研究会年報. 27-52 (2003)
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[Publications] 喜多悦子: "国際緊急人道援助と私 上・下"公衆衛生. 67・10 67・11. 791-794, 897-900 (2003)
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[Publications] 喜多悦子, 松尾和枝: "これからの国際保健医療協力"生活教育. 47・4. 2-3 (2003)
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[Publications] 溝口勉, 山本勇次, 喜多悦子: "危機管理としての熱帯病対策"長崎大学熱帯医学研究所. 253 (2003)