2003 Fiscal Year Annual Research Report
文化資源・環境資源の開発と利用における先住民の適応戦略に関する研究 -先住民政策先進国オーストラリアにおけるアボリジニに学ぶ-
Project/Area Number |
14401018
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
久保 正敏 国立民族学博物館, 民族学研究部, 教授 (20026355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉藤 重信 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (70206415)
松本 博之 奈良女子大学, 文学部, 教授 (70116979)
金田 章裕 京都大学, 文学部, 教授 (60093233)
窪田 幸子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80268507)
鎌田 真弓 名古屋商科大学, 総合経営学部, 教授 (20259344)
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Keywords | 文化資源 / 資源の持続的開発 / 観光資源 / 文化表象と展示 / 民族誌 / 研究資源共有 / 先住民政策 / 文化行政 |
Research Abstract |
本研究では、文化資源や環境資源の開発と利用を通して自文化・社会の発展を図るオーストラリア・アボリジニの活動の諸相を、行政や研究者など他セクターとのダイナミックな相互作用の中に位置づけて明らかにするこどを第一の目的とすると同時に、日本の先住民社会との比較を通して、応用人類学的政策提言までを視野に入れている。 昨年度の調査で明らかになったように、アボリジニ・コミュニティ、研究者、行政、が三位一体となる動きが近年顕著であり、ここにオーストラリア先住民政策の先進性を見ることができる。平成15年度では、個々の事例を掘り下げることに力点を置いた調査研究を行ってきた。 一つの事例は、国立公園の運営自体にアボリジニ・コミュニティが参画する事例であり、関係者の聞き取り調査、アーカイバル資料収集を通じて、上記三者の間に、それぞれのセクターへの利益誘導と絡まる複雑な相互関係があること、それらは、決して固定的なものではなく、新しいイベントに応じて変化する極めて実利的・流動的なものであることがより明らかになってきた。 第二の事例は、いくつかの博物館・美術館における先住民展示であり、先住民コミュニティ自身が企画・運営に関わる例、地元コミュニティへの巡回展示、さらには、地元コミュニティの分館設置、などの動きが見られ、文化資源の所有権の所在、資源自体の所蔵場所、資源情報の所在あるいは共有、という、文化資源の管理と活用に関わる3要素の相互関係もまた流動化しつつあり、そこにはやはり、アボリジニ・コミュニティ、研究者、行政、3者の関係が反映されているが明らかになってきた。 また今年度は、文化資源の形成に際して外部との交流が大きな要素となっている事例として、バティック技術をめぐる北部アボリジニとインドネシアとの間での技術交流の歴史と現在の状況の調査も行い、新しいアイデアや技法がピンポンのようにやりとりされつつ、それぞれの文化資源が形成されていく過程が明らかに成りつつあり、そこにも上記3者の関係が反映されている。 本研究では、昨年度のものも合わせて、調査データの電子化を行い、研究者間での研究資源共有に向けた準備も進めている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 久保正敏: "『裸足の1500マイル』をみる-『盗まれた世代』の少女たち-"月刊みんぱく. 27・12. 14-16 (2003)
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[Publications] 鎌田 真弓: "アボリジニ・コミュニティの自治 マニングリダを事例として"名古屋商科大学論集. 48・2. 73-89 (2004)
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[Publications] 上橋 菜穂子: "歴史の狭間を生きたアボリジニの老人たち-アボリジニ政策に翻弄された「長老」たち-"老いの人類学(青柳まち子編). 93-114 (2004)