2003 Fiscal Year Annual Research Report
レバノン・ティール遺跡での縦穴墓・地下墓の発掘調査
Project/Area Number |
14401029
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
泉 拓良 奈良大学, 文学部, 教授 (30108964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 朋 弘前大学, 人文学部, 助教授 (80271790)
池田 碩 奈良大学, 文学部, 教授 (30098561)
西山 要一 奈良大学, 文学部, 教授 (00090936)
西本 真一 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (10198517)
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Keywords | レバノン / ティール遺跡 / フェニキア / ローマ時代 / 考古学 / 地下墓 / フレスコ画 / 墓制 |
Research Abstract |
今年度は、レバノン共和国ティール市郊外にあるブルジュ・シャマリ町ラマリ地区200番地と199番地で調査を実施した。昨年に引き続き200番地では、壁画のある地下墓TJ04の調査と、昨年度発掘した地下墓TJ01から地下墓TJ04にかけての地域の発掘を行った。昨年度の踏査で新たに地下墓を発見した199番地では、盗掘による遺跡の破壊が進行したため、遺構の存在が想定できた地点で発掘を行った。紀元前1千年期中頃までさかのぼる遺物、カルタゴ女神の記号、ヘレニズム〜ローマ時代のテラコッタ像の出土など、フェニキア時代からローマ時代にかけて遺跡の発見に成功した。 1,200番地所在の地下墓TJ04 (1)床面の清掃発掘を実施した。この地下墓の墓室は、1975年代以降の内戦時に、盗掘と破壊を目的に人為的に壊されたようである。破壊されたフレスコ画のある側壁と奥壁の石材は、ほとんど床面下に残っていて、修復に都合の良い状況であることがわかった。 (2)壁画のクリーニングを、和紙と温水を用いて行った。その結果、天井の画題は二重の花弁紋であると判明した。 (3)南側壁には、床面下に一段の納体室があり、全3段になったが、北側壁と奥壁は納体室は2段であった。しかし、北側壁下の床面には単独の納体室が床面下にある。この納体室は平成16年度に発掘する予定である。 (4)地下墓内の環境調査を実施した。温湿度の変化は基本的に安定しており、光の進入も入り口に遮光扉等を設ければ十分であることがわかった。 2.200番地TJ01からTJ04にいたる地区での発掘調査 (1)作りつけ石棺や、石切場遺構は発見した。石切場遺構はローマ時代からビザンチン時代にわたって使われていた。 3、199番地での地下墓TJ05と不明遺構TJ06の発掘調査 (1)地下墓TJ05は5カ所に納体室を持つ小型の地下墓である。完形のガラス製ウンゲンタリウムや土製ランプが出土した。納体室の一つからは出土したテラコッタ製の像や香炉は、ローマ的祭祀の存在を示す紀元2世紀の貴重な資料である。 (2)不明遺構TJ06からは、年代が確実に遡る資料としてアッティカ式黒釉陶器が出土した。さらに重要な遺物として、カルタゴの女神タニットの記号といわれる文様がつく鉛製の分銅が出土した。この記号はカルタゴやシチリアでの発見例が多く、フェニキア本土での数少ない例になる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 辻村純代, 泉拓良, 柴崎亮介: "レバノン・テュロス郊外遺跡の群集墓-フェニキア・ローマ時代の地下墓群-"平成14年度 今よみがえる古代オリエント. 70-74 (2003)
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[Publications] 泉拓良, 西山要一, 辻村純代, 宮坂朋: "レバノン共和国ティール遺跡の学術調査2003"平成15年度 今よみがえる古代オリエント. 58-61 (2004)
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[Publications] 辻村 純代: "郊外型墓地の出現とその背景-フェニキア都市の再考-"考古学論集-河瀬正利先生退官記念論集-. 1087-1100 (2004)