2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14401032
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
秋谷 裕幸 愛媛大学, 法文学部, 助教授 (10263964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 斎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (40160494)
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Keywords | 中国語 / 呉語 / 甌江方言 / 〓州方言 / フィールドワーク |
Research Abstract |
本年度は、現地諸機関との連絡が順調に進んだため、中国浙江省の呉語甌江方言群の調査を主に行った。秋谷は泰順県新山方言を九月に、また蒼南県湖前方言を十二月〜一月に調査した。太田は瑞安方言を八月〜九月に調査した。甌江方言群は呉語の中でも比較的内部差違が少ない方言群と一般に考えられている。我々の調査はおおむねそれを裏付ける結果となった。しかし、秋谷の調査した新山方言は、他の甌江方言群と非常に異なっていた。他の甌江方言群と異なる顕著な特徴として、(1)入声の短促性が保たれており、なおかつ声門閉鎖音韻尾とk韻尾を区別する、(2)咸攝、山攝、宕攝の鼻音成分が保存されている、(3)咸攝、山撮開口三四等の区別が保存されている、等がある。新山方言の性質については、徹底した研究が必要であるが、目下のところ、甌江方言群と処衢方言群の中間に位置する方言との見通しをもっている。この新山方言の発見が本年度の研究における最大の成果であったと思う。なお、秋谷は本年度三月に上海で開催される第三回国際呉方言学術研討会で新山方言に関する報告を行うことになっている。瑞安方言と蒼南方目は温州方言と近い方言であった。蒼南方言の変調が文法構造に応じて二つのタイプに分かれる点は甌江方言群としては異例に属する。以上三方言については目下データの整理、パソコンへの入力をすすめているところである。いずれも他の呉語方言と同様、変調(tone sandhi)がきわめて複雑で、来年度の再調査が欠かせない。また楽清方言に関しては温州師範学院・中文系の蔡〓講師がテータを提供してくれることになり、秋谷がパソコンに入力中である。海外共同研究者の曹志耘と趙日新は中国にあって〓州方言群の調査を行った。研究開始以前に蓄積していたデータのチェックがその主な内容である。
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