2004 Fiscal Year Annual Research Report
環太洋地域におけるフードシステム構造の変容と農村地域開発の動向に関する研究
Project/Area Number |
14402016
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
早川 治 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (00096885)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 秀樹 明星大学, 経済学部, 教授 (80151827)
下渡 敏治 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00120478)
北野 収 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (90339292)
|
Keywords | 東アジア / 食料需給構造 / 比較優位指数 / 食料貿易 / 多国間農業交渉 / WTO / フードシステム / 交易条件 |
Research Abstract |
東アジアの主要国における食料・農業・農村の変容の実態をマクロ・ミクロの両面から実証的に把握すると共に、各地域における萌芽的な対応の実態を分析することにより、グローバル化時代における開発途上地域の持続的可能な農業政策、地域政策、環境政策などの在り方を検討するための学術的基礎情報を整備することが本研究の目的であった。そこでまず、東アジア主要国における農産物(食料)貿易の輸出パフォーマンスを中心とした比較分析の研究を進めた。1990年代から近年までの比較優位指数、農産物貿易の交易条件、純輸出特化指数などの国際機関のデータを中心に解析することによって、アジア諸国の輸出競争力を比較分析し、上述した貿易自由化の波とその他諸要因がアジア主要国の農産物輸出の全体的構造にいかなる変化をもたらしたかを解明し、アジア諸国における食料を中心とした農産物の輸出市場に関する総合的な政策的課題と問題の全体像を把握した。中国は交易条件の悪化と比較優位指数および純輸出特化指数を低下させてきているのに対し、韓国は良好な交易条件を維持し、比較優位指数及び純輸出特化指数は低いものの安定的に移行させた。東南アジア5力国の中では、ベトナムの交易条件、比較優位指数、純輸出特化指数は、いずれも高い数値で推移し、農産物の輸出国としての地位を確保しつつあることが示された。さらに、21世紀における世界の農産物需給構造を考える場合、23億人以上の巨大な人口を抱える中国とインドの農産物貿易収支の悪化が懸念材料である。これまでのアジアにおける「緑の革命」が「環境問題の壁」に突き当たっていることから、その問題を克服することができる新しい農業の技術革新を推進させることは急務であり、オセアニア地域を含めたアジア全体の需給政策や流通政策の構築が急務である。20世紀とは異なる21世紀型の発展途上国にも配慮した多国間農業交渉をWTOラウンドで進める時期にきているとともに低所得国の農業・農村開発によって食料の生産性を上げながら農村地域の貧困解消を進める政策が求められている。そうした中、新自由主義的農政改革が進行するNAFTA加盟後10年を経たメキシコの南部の最貧地域オアハカ州では,農民グループ,NGO,消費者らによる国・地域を超えた水平的ネットワークの形成というオルタナティヴフードシステムを確認することができ、地域における農協・NGOのネットワークと国際NGOを介したフェアトレードの展開の動向がアジア地域の参考となろう。
|